在宅リハビリできる医療機器で心不全の再入院率を抑える

心疾患を専門にする循環器内科医から4年前、医療機器を開発するベンチャーの経営者に身を転じた。
もともと循環器内科を志したのは「患者さんの状況を見ながら、どうすれば治療の効果を最大化できるかを考えられる余地が大きい」とやりがいを感じたからだ。
なかでも心臓のポンプ機能が働かなくなる心不全は、約5人に2人が入院を繰り返す再入院率の高い病気。谷口氏は再入院率を下げる方法を模索し、臨床の傍ら研究を続けていた。

 
そんな折、医療機器のイノベーションを牽引するスタンフォード大学から日本に持ち帰られた人材育成プログラム「ジャパンバイオデザイン」に参加する機会を得た。
エンジニアらとチームを組んで実際に医療現場を見ながらニーズを探り機器開発のヒントを得る中で、約250のアイデアが出された。その中で心不全の改善に高い効果が見込まれ、薬事・保険戦略、事業可能性、競合の状況を考慮し絞り込んだテーマが、自宅にいながら遠隔で心臓リハビリを行うことのできる医療機器だったという。

 
1回30~40分、週3~5回の有酸素運動を行う心臓リハビリ。「治療法としてはステントやカテーテルを使う手術に比べ、リスクが少なく確実な心臓リハビリの有効性が知られるようになった」。ただ、問題は、施設基準を満たしている医療機関が少ない中、高齢者の多い心不全では、頻回な継続通院が困難なことだ。
そこで「在宅で心臓リハビリができれば継続しやすくなる」と考えた。自身、起業するなどとはこれまで考えたこともなかったと言うが、医師として治療に携われる患者さんは数が限られるが、より多くの心不全患者を救うことができるという確信が起業へと突き動かした。

 

エルゴメーターを使って有酸素運動を実施する患者に、看護師がタブレットやPCを通じて遠隔で“伴走”する。

 
自宅で、転倒などのリスクが少なく有酸素運動ができる手段として専用のエルゴメーターを、心電波形などのデータをリアルタイムでモニタリングできるアプリとともに開発した。
加えて、このシステムの肝は、看護師や理学療法士が“伴走”し、データや患者の表情を確認しながら負荷を調整するなど声掛けをすることだ。「人は人に見られることがモチベーションにつながる」という人の心理を突いた。「まずは1カ月続けてもらうこと。そうすれば、立ったまま靴下がはけるようになる、出歩くことができるようになる、などの効果が実感できる。そうなればさらに続けようという気持ちが生まれる。その好循環をつくることができれば」と谷口氏。
現在、機器を使って効果を調べ、リスクがないかどうかを確認する治験を行っているところで、2023年頃の実用化をめざす。その先には、生活習慣病、うつ病など、運動療法が有効とされている他の疾患にも応用し、在宅での疾病管理まで行うシステムとして発展させていきたいと意気込む。

 

【 2025年 自社はこうなる 】
リモハブ社の開発した医療機器が全国に普及し、海外市場への足掛かりもつかんでいる。

 

代表取締役CEO 谷口達典氏

 
(取材・文/山口裕史)

2021年06月04日
株式会社リモハブ
代表取締役CEO  
谷口 達典氏
事業内容/医療機器の開発・製造・販売

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