介護人材不足の解消めざし新モデルを提示
2000年の介護保険制度スタートと同時に業界に身を投じ、介護施設や介護資格学校での勤務を経て4年半前に「ずっとケアスクールWithYOU」を開校した重松氏。
「介護業界に人材が不足していると言われながら、スクールの多くは資格を取得した人の就職及び中長期でのキャリア形成まで面倒を見ることはなく、働いたとしても過酷な現場ですぐに辞めていく」。
そんな現状を変えるべく、介護事業所とのネットワークを構築しながら資格取得者を就職に結びつけ、卒業後も継続的に学べる仕組みづくりに力を注いできた。
だが、国全体で見れば今後現在のペースで介護職員が増えたとしても、2025年には全国で38万人もの介護を担うべき人材が不足するといわれている。
この構造的な課題に一石を投じようと、重松氏はこのほど65歳以上の元気な高齢者に介護就業してもらう新たな仕組み「民間版職業訓練モデル」の構築をめざした取り組みを始めた。
「2025年に65歳以上の高齢者の数が3600万人以上に達する。このうち100人に1人が介護業界に携わってもらうことができれば不足数を補える」と考えてのことだ。
その切り札として編み出したのが、資格取得者の費用負担をゼロにし、雇用する介護事業者から資格取得費も含んだ人材紹介料を受け取って人材を送る「民間版職業訓練モデル」。
資格取得者に対しては受講時の資金的なハードルを下げることで呼び込みを図る一方、事業者に対しては通常の人材紹介料よりも低く抑えることで採用コストの抑制と安定的な人材確保を一度に実現できる。
目下の課題は、資格取得者への周知だ。そのために行っているのが体験イベント。
「介護の仕事は肉体的にハードというイメージがついてしまっている。必ずしも体力を要する仕事ばかりではないことを知ってもらいたい。そして何より1対1のサービスで、感謝の言葉がもらえるやりがいのある仕事であることを実感してほしい」。
モデルを確立した先には全国の介護資格スクールに広げていくことが目標だ。「38万人を生み出すには全国的な取り組みが不可欠。そのためにもこのモデルで適正な収益を上げ、持続できる仕組みとして確立させることが使命」。
近い将来、スクールだけでなく自ら介護事業所の運営を手がけ「介護職で働く人たちがやりがいをもって働き続けることのできるモデルも提示したい」と重松氏。
「一つ一つの小さな積み重ねが社会課題の解決へと向かっていく」。そう信じて地道な取り組みが続く。
(取材・文/山口裕史)