農業を通じて培ったセンサ、制御技術を広く社会に
ホルトプランがこのほど開発した小型環境センサは、温度や湿度、光といった周辺環境の計測項目の中でも、風速、3次元風向、そして輻射熱の3つにターゲットを絞って製品化した。
「温度や湿度、光は大手がこぞって参入している分野。レッドオーシャンで戦うより、よそが手がけておらず将来の需要が期待できるところを狙った」と林氏。
それぞれ100円玉大のサイズにまとめ、量産化できれば数千円台にまで落とすことができる価格面も大きな強みで「今まで採用をためらっていた先や、潜在的なニーズを掘り起こすことで、新しい市場の創造につなげたい」と期待をかける。
例えば、風速センサ。空調機器は使っているうちにフィルターなどに目詰まりを起こすが、これを風速の変化で測定できればメンテナンスの自動化ができ電気代の削減にもなる。
また、3次元風向センサは3軸で気流を把握することができるため、分煙を実施している飲食店で煙の流れを把握して最適な風向制御が可能になる。輻射熱は体表面に影響させる温度を測ることができるため日射病の予防につなげることができるといった具合だ。
「風速センサは、空気漏れを自動的に把握するなど我々が思いつかない目的でも使われており、そうした潜在ニーズを掘り起こすためにも認知を広げていきたい」と語る。
大学では生物工学を専攻し農業ロボットの研究に携わり、会社員時代も農業分野向けにセンサや環境制御技術を数多く手がけてきた。社会人になってから入った大学院では情報通信技術やスマート社会の研究に関わった。
「農業分野でセンサやICTが導入されれば格段に生産性向上につながるが現場への浸透はなかなか進んでいない」ともどかしさを感じている。一方で、これまで農業分野に長年携わってきたからこそ得られた技術も多い。
「農業は生物学、気象学、化学、経営学などさまざまなことに精通していないとできない総合科学産業」と林氏。今回風速センサが他社にない強みを持つのも「工業分野で使われている既存の風速センサは高価で衝撃や埃に弱い。それに対し丈夫で安価なセンサが開発できたのもそうした蓄積のおかげ」だという。
得られたデータを解析するうえで欠かせないAIの活用についても冷静な見方をする。「今のままだと過去の事例をもとに解析する学習マシンにすぎない。農業の現場では一つとして同じパターンが再現されることはないので、次のアクションを起こすための一歩進んだ人工知能が求められる」と林氏。
農業の現場を知り、制御、情報技術に精通した同社がこれからどんな世界をこじ開けてくれるのか楽しみだ。
(取材・文/山口裕史)
http://www.osaka-toprunner.jp/
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