介護業界の煩雑さを軽減 勤怠管理クラウドサービス『LINDA』

はじまりは、ごく一般的な法定三帳簿のソフトだった。ある展示会にその製品を出展したところ、「なぜこんなどこにでもあるような勤怠管理ソフトを作ったのか」と問いかけられた。その言葉を受けて、「自分が何も考えずに作ったことに初めて気づいた」、と話すのは株式会社プラスワン・イノベーション 代表の中尾氏だ。そのやり取りを見ていた介護業界の担当者が、「うちは勤怠管理で本当に困っている。それに対応できるツールを作れないか」と声をかけてきた。それが勤怠クラウドサービス『LINDA』誕生のきっかけである。
介護や障がい者福祉の現場では、ひとりの職員が複数のサービスにまたがって勤務するケースが多い。たとえば普段はA事業所の管理者として在籍しながら、人手が足りない時にはB事業所の介護スタッフとして働くーーといった兼務が日常的に発生している。このような勤務形態を従来の表計算ソフトで管理する業務は煩雑で、現場では大きな負担となっているが、『LINDA』 では各担当者の予定を入力するだけで、シフトの作成から勤務実績の集計までを自動化できる。
実際、このツール開発に伴走した介護施設では、これまで勤怠管理の事務作業にあてていた時間が半減したという。残業時間が減り、施設全体のコストダウンにもつながった。また、浮いた時間を研修にあてることで、介護の質を向上させることにもなった。そしてなにより、「これでやっと楽になれる」という担当者の切実な言葉が中尾氏の心に残っている。
そんな日々を経て、意気揚々と2社目への導入を進めようとした中尾氏だったが、そう簡単には進まなかった。「1社目の満足が2社目の満足につながらなかったんです」と振り返る。同じ業界とはいえ、事業者によって抱えている課題や運用の実態は違う。2社目でも新たな課題が浮上するたびに、人事労務の奥深さと煩雑さを思い知らされることになった。そこで顧客に要望を聞きながら、機能を日々リニューアル。「その頃は製品を毎日リリースしているような状態でした」と苦笑する。
今後は『LINDA』をブラッシュアップしながら、介護業界に特化していく方針だ。当面の目標は早期の黒字転換。そして『LINDA』の実績を活用しながら、他業界への展開も視野に入れている。もともとフリーのプログラマーとして活動していた中尾氏は、「自分の作ったプロダクトが世の中で動くのを見たい」、その思いから会社を立ち上げた。理念は「小さな一歩」から。社名の「プラスワン・イノベーション」にはそんな思いが込められている。

代表取締役 中尾 信也氏
(取材・文/荒木さと子)

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