ビジコンをきっかけに飛躍した起業家にあれこれ質問をぶつけたら、ビジネスのヒントがザクザクこぼれ落ちた件〈株式会社OTENTO〉編
【 CASE:4 】株式会社OTENTO
株式会社OTENTO
代表取締役/CEO 鳥居本 敦士氏
人材派遣会社で労務管理を経験し「非正規雇用者を適正に評価する制度が充実していない」と感じていた鳥居本氏は「非正規雇用者のキャリアアップを支援したい」と2018年に起業を決意。2つの会社を設立した後、2021年にOTENTOを設立した。お客さまからの「ありがとう」のメッセージやデジタル化したチップをスマホから従業員へ送ることができ、顧客のメッセージをAIで解析する人事評価システム「OTENTO」を開発し、2022年6月より飲食店を中心にサービスをスタート。働く人のモチベーション向上や自己成長を促し、雇用主にとっては従業員の定着率が上がり顧客満足度や売上を伸ばすことができる。さらにお客さまから受け取った賞賛のレポートを第三者による客観的なリファレンス(推薦状)として活用できる履歴書システムの開発もめざす。「学歴や資格では測れない積み重ねた努力やホスピタリティ精神に表れる人徳が未来につながる社会をつくりたい」とこれからも邁進する。
Q:創業したきっかけは?
「鳥ちゃんのためなら出資する!」と資金が集まった
働いていた乳業メーカーの工場で人事評価に疑問や悲しさを感じ、人材派遣会社へ転職しました。どんなに優秀でも学歴や資格がなく、自信を持てずに辞めてしまう派遣スタッフを身近に見ていて「なんとかしなければ!」と人事評価制度の改革を行いました。当時から「頑張る人がきちんと評価される社会をつくりたい」と話していたのですが、先に起業した先輩や後輩から「早く起業しろ!」と出資してくれたことが後押しになりました。
Q:自分が育った環境に経営者(起業家)はいる?
子どもの頃から「社長になる」宣言
親族に経営者や起業家はいないのに、子どもの頃から「将来は社長になる!」と言っていたそうです。自分では覚えていなかったけど、最近母が教えてくれました。母子家庭だったので「早く母を助けたい」という思いが強かったこともあり、高校を卒業後すぐ就職したのですが、潜在的に「いつか起業したい」という気持ちがあったのかもしれません。
Q:日常生活における習慣やジンクスは?
上場をめざして朝活
リファレンスを活用できる社会に変えるには、上場してリファレンスを発行する当社の信頼性を高めなければと考えています。上場企業の経営者のほとんどは努力の天才で、どんなに遅くまで働いたり、飲んだりしても早く起きて活動している。上場をめざしている私が朝のんびり寝ている場合じゃない(笑)。毎朝読みたい本を音声で聞きながら5キロのランニングと近所の神社にお参りすることを日課にしています。
Q:別の事業から始めた理由は?
経営者としての経験を積むため
「OTENTO」は社会を変える事業だから、実現するには相当な予算、人脈、支援者、覚悟が必要!と考えていたので、まずは経営者としてのスキルや挑戦できる素地を固めようと思いました。2020年にマスクや衛生品など感染症対策商材の卸売を行ったところ2年目で年商1億円を3名で突破することができ、人材サービスの会社も設立。たくさんの方からの支持やご支援をいただいて準備金が集まり2021年に「OTENTO」を創業しました。
Q:起業家人生最大のピンチは?
資金が尽きかけて目の前が真っ暗に
システム開発費や人件費がかかり2 年ほどで資金が尽きかけ「もう終わった」と思いました。泣きながら取締役に伝えたら「諦めたくない」と言われ、妻にも「逮捕されたわけじゃない」とはっぱを掛けられて(笑)。ダメ元で銀行に相談すると担当者が「絶対続けましょう!」と融資が決まり、事業継続できました。辛いときに周りが支えてくれ、支援いただける方と知り合えて本当に感謝しかありません。
Q:ビジコンに参加してぶっちゃけどう?
起業をめざす仲間ができた
ピッチ前の研修や勉強会で、起業をめざす仲間たちと知り合えたことがものすごい財産になっています!起業前は孤独な面もあり、同じ苦しみを味わっている出場者たちに聞きたいことが山ほどあって、「どうやってメンバーを採用? 」「開発はどうしてる?」「プレゼン資料を誰が考えてるの?」と自分から話しかけました。志のある仲間の輪が広がり、今も集まってさまざまな経営の悩み相談や情報交換をしています。
Q:共感を得るために工夫すべきことは?
かっこいいプレゼンは捨てて自分の世界へ
信頼してもらうには「自分らしく」伝えることが大切。システムやサービスの説明に走ってしまうのではなく、自分が実現したい社会や事業への想いがなぜ生まれたのかを伝え、相手を自分の世界に引き込めるよう情熱的に話すことを意識しています。そこでかっこよく見せようとすると自分らしさがなくなるので、自分の心の状態を把握しながら正直に話すように心がけています。
Q:いい仲間を見つける方法は?
「志」を語り続ける
「日々努力する人が報われる『お天道様は見ている』と実感できる世界に変えていきたい! 」「気持ちのよい接客やサービスをしてくれる人に『ありがとう』の気持ちを伝えられて、それが評価につながる仕組みをつくりたい」とずっと周囲に語っていました。起業することを伝えたら「一緒にやりたい」「手伝いたい」と高校の同級生が参加してくれて。志を語り続けたことで賛同してくれる人が集まってくれました。
(取材・文/三枝ゆり 写真/福永浩二)