株式会社明成孝橋美術が手がける「デコペタシール」、視覚障がい者の手がかりになるシンプルで優れたデザインとは?
点字状の突起を用い、丸や矢印などの絵柄を凹凸で表現する『デコペタシール』。調味料のチューブやポイントカード、家電のスイッチなど、形状が同一でありながら色やデザインによって種類が分けられているものは身の回りに数多くある。「触れることで、視覚障がいがある方が迷わず識別できる手がかりになれば」と、産学連携のプロジェクトとして開発された。
法政大学の学生グループによって、視覚に障がいがある方約60名にモニタリングを実施。点字を認識できる視覚障がい者ばかりではないこと、介助者が点字を認識できなければサポートが難しいことが分かり、あえて点字は採用せず6種類のシンプルな絵柄に行き着いた。
学生たちの想いを具現化したのは天王寺区に本社を置く株式会社明成孝橋美術。パッケージやSPツールといった、千差万別の特殊印刷を得意とする企業だ。「小さな面積でありながら突起の高さは必要。通常の約5倍厚のシルクスクリーンを用い、3回刷りで樹脂を乗せる盛り上げ印刷で量産体制にたどり着きました」と代表の孝橋氏。
日本点字図書館でのテスト販売を経て、ECサイト等での販売を開始。「視覚障がいがある当事者の声に耳を傾け、作られた製品」として、試作段階から大変喜ばれたという。家具の衝撃吸収用クッションシールで代用するなど各人の工夫で乗り越えてきた不便さに向き合い、生み出されたデコペタシール。根底に流れるあたたかな想いが、人にやさしい社会を支えている。
(取材・文/北浦あかね)