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小さなことから少しずつ 「DX」で面倒を減らす、株式会社フォレストパックスのデジタル化への挑戦

2023.06.08

砂糖類の加工と販売、パッケージ・包装加工を行う株式会社フォレストパックス。2年前から業務のデジタル化に取り組み始めたが、「うちにはITの知識がある者がいなかったんです。DXというものに、ものめずらしさを感じて大阪産業局の大阪DX推進プロジェクト(OBDX)の講習を受けてみました」と代表の森氏は話す。

何から始めるのか。会社に戻り業務を見なおした時、パソコンの動きが遅いことが気になった。「デザイン業務用のパソコンで複数のソフトを立ち上げると固まってしまうんです」。講習を担当した専門家に相談すると、「メモリを増やすといいですよ」と。アドバイスを受けながら社員がメモリを選定して増設作業を行うと、重かったパソコンがサクサクと動き始めた。「他愛もないことかもしれませんが、私たちにとってはこの経験が大きかった」。ここから同社のデジタル化が始まった。

次に取り組んだのは経理作業。これまで経費を現金出納帳と出金伝票に手書きし、レシートや領収書を貼って残していたが、その作業をすべてエクセルで行うことに。費用と費目を入力し、自動的に出金伝票が出力できるようにしたことで大幅に省力化できた。記載を間違えても修正するのは一部のみ、データが関連付けられているので誤記もない。事務の苦労が一変した。

工場内業務のデジタル化にも取り組んだ。取引先からのオーダーを記載する商品カルテとよばれる仕様書を、これまでは総務担当者が紙に打ち出して工場のファイルに綴じていたが、総務のパソコンで入力しクラウドで一括共有。工場内に配置したタブレットへリアルタイムに反映される仕組みにした。商品情報が一斉更新され、現場では「常にこれが最新」というカルテを見ながら作業ができるようになったことで、ミスがなくなった。

工場内ではタブレットで最新情報を共有。

自社のローカルサーバーのみで行っていたデータをクラウド化したことで取引先にも安心感を与えた。「うちは大半がOEM。取引先の大切なデータをどのように預かっているのか、お客さまも情報セキュリティは気になるところだと思います」と森氏。クラウド化は情報のバックアップとともに社員の在宅勤務も可能にした。

これらデジタル化に対するOBDXの支援を森氏は「伴走型」と言う。「専門家が与えてくれるのはヒントだけ。正解は自分たちが調べて見つけるしかない」。社員たちがITの入門書を見ながらソフトを探し、できるところまで自分たちがやった後に専門家に意見を仰ぐ。「時間がかかって大変ですが、達成感があります」とある社員。これまでトラブルが生じたら事務機器商社にすべて任せていたが、社員のITスキルが上がったことでメンテナンス費用の削減にも繋がった。

現在、同社では自社製品の開発にも力を入れている。冷たい飲料にさらりと溶ける『アイスドリンクシュガー』という製品だ。「紙包装で脱プラスチック。環境面にも配慮した、これまであるようでなかった商品です」。認知を広げようと昨年夏からSNSで毎日情報を発信し、フォロワーが2,500人を超えた。

冷たい飲み物に溶けるエコな砂糖『アイスドリンクシュガー』

また、経済産業省のDX認定制度にもチャレンジしている。「東大阪でもDX認定を取得している会社は少ないんです。これまでの取り組みを成果にまとめて会社のPRにつなげていけたら」と森氏。申請作業を担当するのは「以前はパソコンにさわったこともなかった」という社員だ。

昨年、同社は社員一人一人が案を出し、『DXで面倒を減らす 東大阪の会社』というスローガンを決めた。「目に見える大改革をしているわけではなく、身の周りの気づいたことをやっているだけなんですが」と控えめに森氏は話す。今後は製造現場でどのような面倒を減らせるのか、会社全体にDXを広げていく予定だ。「今はまだ作業管理表を手書きで行っているので、製造の記録をデジタル化して作業効率をあげていきたいですね」。

代表取締役社長 森 秀樹氏

(取材・文/荒木さと子)

株式会社フォレストパックス

代表取締役社長

森 秀樹氏

https://www.forest-p.co.jp

事業内容/砂糖類の加工と販売、パッケージ・包装加工