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【其の十】コロナ禍に学ぶ、竹屋化学研究所が提供する危機管理の新たな視点

2023.05.12

自然災害や感染症、セキュリティ事故などへのリスクマネジメントの一策として策定する企業が増えているBCP(事業継続計画)。重要なのはわかるけれど、実際どうやって作ったり使ったりするの?とわからないことだらけな方も多いハズ。このコラムではそんなBCPの策定・運用に取り組む大阪の中小企業のエピソードをご紹介します。

【其の十】
コロナ禍の経験を今後に活かす

株式会社竹屋化学研究所は建築用ポリマーセメントの製造販売を中心に、関連製品や工法システムの研究・企画・販売を行っている。3年前、経営企画室の発足とともに、BCPをTO DOリストに入れた。「当社のお客さまは全国のハウスメーカー。私たちは中小企業ですし、“安心して製品を買っていただける会社”という位置にいなければ」と取締役の竹谷氏はきっかけを話す。着手したのは防災面。食料品の備蓄やヘルメットの装備、書棚の固定、避難所の場所確認や連絡網アプリの導入を行った。

そうするうちにふと手詰まり感を覚えた。防災に意識は向いたが、事業を継続していくためには防災だけでは不十分なのではと。そのような時にコロナ禍に突入した。「緊急事態が目前に迫っている状況で、うちの会社がいちばん困るのはなんだろう、代わりが利かない部署(仕事)は何だろう」。社内で思いを巡らした結果、「もっとも困るのは業務部の仕事が止まること。業務部でしか分からない・出来ない事が多い」との結論に行きついた。

コロナ禍になり日頃の業務内容の棚卸を行った結果「幸い製造部門には当面の製品の余裕がある。営業部は政府からの行動制限もあり動けませんし、経営企画室も大半の業務は後回しでも問題ないと判断しました」と竹谷氏。しかし「毎日の受注、出荷を担う業務部が回らなければ事業が止まってしまう」と判断し優先順位が明確になった。

大阪本社では感染対策として社内の密を避けるために出社人員を半分に減らす交代勤務を実施。出社している社員は全員、業務部の仕事を手伝うことに。「取り急ぎの事業を継続させる為に、とりあえず業務部を動かす」。この経験は、各部署の属人化した業務のマニュアル化を進めるきっかけになった。また事業継続の必要性を痛感しその後、経済産業省の事業継続強化計画の策定に取組み、まずは形が出来た。

計画書という形を作った同社ではBCPを社内、社員一人一人に浸透させる段階にきている。「いざというときには全員が我が事と思って動かなければ」と経営企画室の山田氏。訓練、問題点の洗い出し、対策、そして訓練のサイクルを回そうとしている。

昨年、支援機関のサポートを受けて全社員でオンラインでの訓練を行った。WEB上でありながら、本番さながらの状況を経験し、準備の重要性を感じる事が出来た。訓練に参加した社員からは「思っている以上に何も出来なかった」という声が上がった。「実際の災害ではもっと切羽詰まる。策定だけでは絵に描いた餅」と山田氏。「計画書をどれだけ丁寧につくっても、実際に動けなければ意味がない」と訓練の重要性を感じている。

同社はSDGsの取り組みも進めている。「そのプロセスがBCPにもつながった」と竹谷氏。テーマを考えたとき、国内と海外の材料調達先を見てさまざまなリスクを考えた。そうしたときに「サプライチェーンを見て自分たちがこれだけ考えることがたくさんあるなら、顧客がうちに安定や信頼性を求めるのも当たり前」とあらためて納入責任の重みを感じ取った。今、その重みを具体的に業務に反映しようとしている。

(取材・文/荒木さと子)

 
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株式会社竹屋化学研究所

取締役 経営企画室室長 竹谷 理沙氏
経営企画室課長 山田 貴文氏

https://www.takeyakagaku.com/index.php

事業内容/建築用ポリマーセメントの製造販売、関連製品や工法システムの研究・企画・販売