《講演録》心づくしの採用が起こした奇跡〜ほぼ素人・味方なしから始まった人事・採用改革記【前編】
《講演録》2019年10月9日(水)開催
【トークライブ!】心づくしの採用が起こした奇跡
〜ほぼ素人・味方なしから始まった人事・採用改革記
原田 英美子氏(小川珈琲株式会社 社長室室長)
既婚で子どもがいる女性として初めての中途入社。初の人事・採用担当を経て、女性初の管理職を経験。逆風に負けず、社員や学生一人ひとりと直接向き合うことで、新入社員を育てて会社の風土まで変えてきた。20年以上、内定辞退ゼロを実現してきた原田英美子氏が、人を大切にする採用活動について語る。
▶創業60年超、京都でコーヒーを扱う老舗・小川珈琲
1952年、京都の中心部・柳馬場というところで創業しました。創業者の小川秀次氏は、太平洋戦争の出征地でコーヒーに初めて出会い、「生きて帰ったら商売に」と誓い、帰国後に事業をスタートしました。
スタッフは本人を含めて焙煎・営業の3人。事務員さんもおらず、家族総出で新聞広告を折って封筒にしていた時期もあったそうです。
直営の喫茶店がオープンしたのは1970年のこと。豆の販売と喫茶スペース、両方を行うお店としては先駆けです。4年後には12店舗まで増えました。
1976年には本社を西京極に移転。規模が大きくなり、街なかでは焙煎が難しくなって京都の西京極に移転しました。1997年には長男の秀明氏が社長に就任し、改革を推し進める方向に会社の体質も大きく変わりました。
2014年にはOgawa Coffee USAを設立し、翌年ボストンにお店もオープンしました。現在、従業員数400名、売上高80億円、おかげさまで安定して経営を続けています。
企業理念は、「私達は珈琲職人として、本物の価値ある商品を創り、真心を持ってお届けする」です。ここを突き詰めて、差別化することで発展したと考えています。
「有機JAS認証コーヒー」の小袋は日本で一番の売り上げ(小川珈琲調べ)。貧困や環境問題にいち早く取り組み、「バードフレンドリー認証コーヒー」や「フェアトレード認証コーヒー」を手がけています。コーヒーの産地は治安のよくない地域が多いのですが、毎年必ず生産者に会いに行き、顔を見て直接話をします。
また、「人と同じく、一つとして同じ味の珈琲豆はない」を信条に、特徴に合わせて1つずつ焙煎した豆を後で混ぜ合わせるアフターブレンド方式を採用。社員にはバリスタ世界チャンピオンもいて、抽出技術の向上にも力を入れています。
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