女性社員の力で、町工場からの脱皮をめざす
金属加工の製造現場で女性社員が働く姿を少しずつ見かけるようになった。だが、センショーほど多くの20~30代女性社員が働く工場は見たことがない。製造現場だけでその数は10人。営業や経理、総務などを合わせると全社員60人強のうち18人を女性が占める。
6年前、堀内氏は全社員の前で「この会社を町工場から中小企業に変えたい。そのために若い女性を採用する」と宣言した。
「帳票類もすべて紙が使われていたアナログの会社だったので、パソコンが使える女性社員をまず必要としていました」と堀内氏。インターンシップを利用して受け入れた大学生の女子3人、男子1人がそのまま就職し、一歩を踏み出した。
「若い女性社員に何ができる」「人を採用する余裕があるなら現場に」。現場の男性社員からの反発は大きかった。
だが、作業標準書や教育マニュアルをデータ化し、多忙な折には現場で治具掛けにも携わった。その懸命な姿と、データを使う便利さが浸透してくると女性社員を見る目が変わっていった。
女性社員の存在は採用面でも大きく貢献した。「女性社員が働ける安心な現場だと実感してもらうことができ、製造現場で働きたいという女性も増えていきました」。その効果は想像以上で、大学院卒の技術者の採用にもつながり、今年4月には8人が入社した。
建設会社で働いていた堀内氏がセンショーを設立したのは7年前のこと。前身の会社で事実上経営を取り仕切っていた堀内氏の父が亡くなると、残された経営陣が「ようやらんから畳む」と言い出した。「20人の社員と取引先のことを考えると廃業は考えられなかった」。堀内氏が、会社を買い取るかたちで経営を引き継いだ。
保有不動産を売却し、金融機関の協力も得ながら、12億円あった債務を数年でゼロにし、新しい設備投資に踏み出せるようになった。一つだけだった工場は現在4つに増え、売上高は3倍に増えた。何より堀内氏にとっては現場の社員が研修に参加し、どん欲に学び、新しい技術の開発にチャレンジしている姿が頼もしいという。
「会社を始めた頃に現場の子が“ぼくは中卒やからこんな会社でしか働けない”とこぼした言葉が突き刺さって。社員がこの会社で、この業界で働くことに誇りを持てるようにすることを一番の目標に掲げてきました。そこに少しずつ近づきつつあるのかな」。
人も設備もそろった。「あとはしっかりとした会社組織にしていくこと」と、今後は人事評価制度の整備や月次決算の導入にも取り組んでいく予定だ。
(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)