つながりの場をつくり、安心して生きられるまちづくりを
堂島川沿いのレストランで3カ月に1度、医療を中心としたまちづくりの可能性を探る「メディカル・エコ・タウン カンファレンス(MET)」が開かれている。
医師と企業関係者が1人ずつ講演し、懇談の場もある。毎回メーカー、不動産、金融など多様な業種の担当者や薬学部の学生が集まり、すでに26回を数える。主催するのは大阪府下に18の調剤薬局を展開するニューロンネットワークだ。
「多くの企業が医療、健康の分野でビジネスチャンスをうかがっているが、流通をどうするか、エビデンスをどう確保するかなどで行き詰まる。参加者同士をつなぐことができれば」と奥村氏。
すでに成果も生まれている。地域住民との交流の場づくりとして開催している「健康フェア」は2014年にMET参加企業とともにスタートした。子どもから老人まで参加できるよう、血圧・体組成の測定や、セミオーダー枕の作製のほか、子ども向けに薬剤師の仕事が体験できるイベントを行っている。
さらに、METに参加するスポーツ用品メーカーのミズノが開発した吸湿発熱素材を寝具メーカーの西川リビングで毛布として商品化したのもその一つ。西川リビングについては大阪市立大学の教授を紹介し、マットレスが疲労を軽減できることを科学的に証明することにもつながった。
いずれの活動も同社の売上げや利益に貢献するといった直接的なメリットはないが、こうした場を生みだすに至った経緯をたどると、創業時の石田社長の思いに行き着く。「石田の子どもの1人が重度の障がいがあり、安心して次世代に残せる医療を実現したいという強い気持ちを持って医療のあるべき姿を追求している」。
地元で中核医療機関を移転集積するプロジェクトで整備される医療モール構想のNTT西日本、関西電力と4年前からMETを始めたのも、その思いの延長線上にある。「コンペに向けチームに取り組んだこのモールは実現しなかったがお陰様でさまざまなチャンスが生まれた。これをよりよい医療につなげるため多くの企業に開放しようと考えた」。
地域で医療・介護を完結する流れが進む中で、調剤薬局が地域住民の健康を支えるワンストップの役割に期待が集まる。現在、調剤薬局に足を運ぶのは処方箋を持ってくる患者がメインだが、地域の「ヘルスケアステーション」として住民向けセミナーを開催したりカフェとしてスペースを活用するなどの展開も考えている。
「METで生まれた成果をもとに、地域の方に健康に関わるあらゆる相談に応じるとともに、待つのではなく自ら出ていく調剤薬局をめざしたい」と先を見据えている。
(取材・文/山口裕史)
今回、ニューロンネットワークが選ばれた【ええやん!プロジェクト】とは・・・
大阪産業創造館では、「ええやん!プロジェクト」と題し、人事制度や働き方改革、地域貢献、異業種連携などの取組みを中小企業から募集しました。
https://www.sansokan.jp/events/eve_detail.san?H_A_NO=25106
31の応募の中から「今後の展開の可能性」「社会的意義」「ユニークさ」から審査を行い、5社に取材し掲載しています。
↓↓↓今回取材した5社の取組みはコチラから↓↓↓
https://bplatz.sansokan.jp/archives/category/eeyan