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【ドロキア・オラシイタ長編】常に新しい驚きを仕掛け、チーズタルト専門店で海外進出

2014.07.09

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行列の絶えない店として名をはせる、焼きたてチーズタルト専門店「PABLO」を全国に8店展開する。舌の肥えたスイーツ愛好者をとりこにする秘訣は、素人ならではの発想に基づいた、業界の常識にとらわれない商品力にある。多くの紆余曲折を経て生まれた「PABLO」の誕生秘話、そして行列を作る店にするための戦略を嵜本氏に聞いた。

>>> 高校卒業後、お父様が営むリサイクル業の世界に入ったそうですが。そこでどのようなことを学びましたか。

閉店したお店の什器を引き取って、それらをきれいにし、新たに開業するお店に販売していました。商売を畳まれるお客様と、逆に右肩上がりで成長させているお客様と日々接するなかでさまざまなことを学びました。うまくいく、またいかない理由はなぜかを考えると、立地条件だったり、お店の作りだったり、オペレーションのやり方であったり、お客様の接し方であったり、さらにはオーナーの人格であったり…。とくに、成功されている経営者の方は、お客様はもちろんのこと、私たちのような取引先に対しても気遣いいただけたことがが印象に残っています。

>>> 23歳のときに独立されています。その理由は。

リサイクルショップで扱っていた什器や家具、家電などの売値が下がって利益が出にくくなっていました。大型の家電量販店や家具量販店があちらこちらにできた影響が大きかったですね。そして、扱うものが大きいものばかりでしたから、在庫を抱えるのも大変でした。

同じ扱うのであれば小さくて高単価のものが効率がよいと考え、高級ブランド品や宝飾品に特化したブランドリサイクルショップに衣替えし、次弟、末弟と3人で会社を立ち上げました。それまでの総合リサイクルショップの仕事は力仕事で、油まみれになるものでしたから、一緒に働いている仲間たちに少しでも楽をさせてやりたいという気持ちも強くありました。

スタッフたちには「全員がスーツを着て仕事が出来る環境を準備するから、待っててくれ」と約束し新しい会社をスタートさせました。1年で手応えをつかんで、前の店にいたスタッフも全部呼び寄せ、ブランドリサイクルショップを次々に出店していきました。

>>> そこからなぜ洋菓子店を展開することになったのでしょうか。

ブランドリサイクルショップは3年で4店舗まで増やすことができました。ネットのオークションなどを活用した販売も行い、売上げは伸びていきました。ところが、当然ながら商品がないと販売が出来ない業態です。商品仕入れが減ると販売数も伸びないという点が弱点でした。その経験から、自分たちで作ったものを売りたいと思う気持ちが強くなっていたのです。

その頃、たまたま西宮で大きめの物件を見つけたので、どのような店にしようかと考えました。周辺に富裕層の方が住むエリアであることを踏まえ、ケーキやコーヒーが出せるカフェ付きの買取サロンを考えました。ところが調べてみるとカフェで収益を上げることは非常に難しいということがわかりました。

そこで、当時はお取り寄せブームだったこともあり、ケーキの物販を始めようと決めました。この時3兄弟で力を合わせていくという思いも込め、「パティスリーブラザーズ」という名前でお店を立ち上げました。

>>> 3兄弟、仲がいいんですね。

私はファッション、次の弟は料理の世界をめざしていました。末弟は、ガンバ大阪にも所属していた元Jリーガーという、それぞれが異なるセンスを持っていました。性格も次弟は情熱家で行動力に満ちたタイプ、末弟はどんな時も冷静に物事を判断出来るタイプとそれぞれに異なっていました。私は、二人の意見を踏まえ、方向性を定めて進む道をリードしていく役割です。

3人兄弟年子で、仲がいいんです。正直なところ、3兄弟が仲良くいられるのは兄貴次第だと思っています。私は、たまたま弟たちより1年、2年早く生まれたというだけで会社では代表をさせてもらっているだけです。弟たちは僕に持っていないものを持っているし、彼らが持っていないものを私が持っている。だからこそ、力を合わせればすごい力を生み出せると確信しています。

私は3人の立場は常にイーブンだと思っています。そのことを常に頭に置き、お互いの良いところをリスペクトし、相手を立てる事を意識する事で良い関係が成り立っています。

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>>> 洋菓子店を立ち上げるにあたって、どのようなことを考えましたか。

この時代おいしいのは当たり前であって、興味を持ってもらうためにはその上にプラスαがなければならないと考えました。当時はロールケーキやバウムクーヘンが流行っていましたが、同じものをつくっても仕方がありません。まずは見た目でひきつけ、さらには味でもう一つサプライズを感じてもらうお菓子を作ろうと思い、驚かすお菓子という意味で「おどろ菓子」をコンセプトに掲げました。

とろけるバウムクーヘン、四角いシュークリームは次々にお客様から好評を頂きました。こういう発想ができたのは、私たちがスイーツ業界を経験しておらず、洋菓子の知識がない素人の考えでアイデアを出せたことが大きいと思っています。

たとえばシュークリームは水蒸気で膨らますものですからどうしたって丸く膨らむのですが、四角くするために箱を用意して焼きました。ところが箱に生地がくっついて離れない。それならフライパンに焦げない加工がしているように、テフロン加工の入れ物を使えばいい。そんなふうに考えていきました。

>>> 好調な滑り出しだったんですね。

商品の面白さに加え、3兄弟がやっているということで話題を呼び、多くのお客様にご支持をいただきました。私たちも、期待に応えようとブランドをもっと大きくしていきたいという気持ちが強くあったので、店は2年ほどで13店舗にまで増えました。

ところが急ぎすぎたあまり、需要に供給が追いつかない事態が生じていました。社員にもかなり無理をして働いてもらいました。また、製造は外注の委託先を増やしていたので気がつけば仕入原価のかかる効率の悪い商売をしていました。商品の種類も多かったので、在庫も抱えながらの経営で、気づけば投資額が勝り、利益の残らない状況に陥っていました。攻めの姿勢を意識するあまりに、後ろを振り返らず、守備力が伴っていなかったんですね。

そこでいったん立ち止まって、3人で話し合って商売のやり方を考え直すことにしました。もっと効率化を図るにはどうしたらいいかを考え、アイテムを絞り、在庫を抱えない商売に転じよう考え、専門店化という発想が出てきました。焼きたてチーズタルト専門店「PABLO」の誕生です。

株式会社ドロキア・オラシイタ

代表取締役 

嵜本 将光氏

http://www.drq.co.jp/

焼きたてチーズタルト専門店「PABLO」を全国に8店、洋菓子店「パティスリー・ブラザーズ」を東京に1店、カフェ業態の「BROTHERS Cafe」を大阪に2店展開している。