新規事業を支える灯油販売 灯油販売を支える新規事業
「ゆ~きやこんこ♪」で親しまれるシューワグループの灯油巡回販売。「わざわざ出かけなくても灯油を購入できる」と高齢者や主婦に喜ばれている。このサービスは関西、東海、中部、中国、九州など全国の拠点から、およそ100万世帯に灯油を販売。その量は灯油小売業において日本一を誇る。「一度の巡回で多くのお宅に運ぶことで配達コストを削減。ガソリンスタンドと同じ価格で提供できる」と語るのは矢野社長だ。
堺市で灯油の巡回販売を始めたのは26年前、18歳の時。当時も競合他社よりも低価格だったものの、それだけに頼ることはなかった。「安さだけでは選んでもらえない。給油した場所からお客さんの家の玄関までに階段があればポリ缶を持って登る。『ありがとう』と言ってもらえるプラスアルファが大切」と語る。その“プラスアルファ”を一つずつ重ねることで、「灯油の兄ちゃん」として信頼され、いつしか口コミで評判が広がっていった。
手ごたえを感じた矢野氏は、堺市から少し離れた東大阪市に進出。足場を固めた後、隣の八尾市にも支店を開設。「一歩半先に行き、周りを攻める」。この方法で全国に販売エリアを広げていった。
巡回販売で培った地域との信頼関係は、同社のその後の事業展開の礎となっていく。灯油の売上げは冬が99%で夏が1%。夏場の売上げを確保する新規事業が必要だが、冬は「猫の手も借りたいほど」忙しいため、一年を通しての商売ではだめだ。そこで始めることにしたのが、エアコンの取り付けとクリーニングだ。
「主婦の方は他人を家の中へ入れたがらないが、いつも見る顔ならと安心してもらえる」。今では排水口や洗濯槽、レンジフードなどのクリーニングも手掛ける。いずれも灯油を販売しながら交わすコミュニケーションから発掘したニーズばかりだ。
また、同社が所有する富士山の水源地から採れる天然水を2年前から販売開始した。「水も重いでしょ?灯油巡回販売のルートで、お客さんの家まで届ければ高齢者の方に喜んでもらえる」。
平成20年に原油の価格が高騰。同業者の廃業が相次いだ。同社も大きく売上げを落とすが「灯油を待っているお客さんがいる。簡単にやめるわけにはいかない」と、他の事業を拡充することでV字回復を果たした。「今期のグループ売上は100億円。10年後には30事業で1000億円を売り上げたい」と意気込む。
▲巡回する時間帯とルートを書き込んだ戦略マップ。地域ごとに1500枚ある。
▲なにげない会話が交わされる配達現場。温かい言葉に社員が元気づけられることも。
▲地域との信頼関係から生まれたエアコンクリーニング。
▲赤いラインと雪だるまがトレードマーク。修理や車検などのメンテナンスも社内で行っている。