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【長編】部活動ノリでスタートした会社がいまや売上げ70億円。 それでも創業時の社風を守り続けている理由

2014.06.09

社員が楽しめる会社をめざし、社長が25年間のサラリーマン生活を投げ打って創業したTAT。創業16年で売上げ70億円、従業員規模230人に急成長。事業計画や人事考課などすべてを数値で管理する一方、社内の風通しは良く、底抜けに明るい社員たちが家族のようにワイワイ楽しく働いている。そんな奇跡のような会社だ。事業規模の拡大に合わせて組織化しながらも、社員の自主性を後押しする企業文化をどう醸成していったのか・・・。その秘訣を聞いた。

>>>まず創業の経緯を聞かせてください。

ネイル商材専門の卸業者である当社は、社長の父が25年間以上続けたサラリーマンを辞めて創業した会社です。たまたま空港で手に取ったビジネス書(『破天荒!―サウスウエスト航空 驚愕の経営』日経BP社)で従業員満足を優先するES(エンプロイー・サティスファクション)という考え方を知って衝撃を受け、自分なりの理想の会社をつくろうと一念発起したんです。

父は小売業界に長く身を置き、商品を買ってくださるお客様が一番偉いんだという暗黙の了解の中で働いてきました。自分たちの犠牲の上に、お客様の満足が成り立つと当然のように思っていたんです。でも、まず従業員の幸せがあって、その結果としてお客様の満足につながる、そして会社としての利益までついてくるなら、それが最上だ、ということでこの会社を始めたわけです。

創業時に決めたのは、「楽しく働き、お客様に喜んでいただき、会社が少しでも儲かればいい」ということ。最初は部署も役職もなく、クラブ活動のようなノリでスタートしました。どうやったらスタッフが楽しく働けるか、どうやったらお客さんとの絆を深められるか、そればかり考えてやってきました。

利益を第一に追求してきたわけではないものの、おかげさまで業績は右肩上がりを続け、創業16年で売上70億円、従業員230人規模の会社にまで成長することができました。

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>>>事業の急成長に組織化が追いつかない会社が少なくありません。

当社も失敗の連続で、少しずつ組織体制を充実させてきた感じです。とくに社員数が増えてくると会社で理念を共有したり、企業文化を守ったりすることが難しくなります。当社の場合、トップの頭の中にあることを文章化し、具体的な方向を指し示すうえで役立ったのは経営指針書です。

急成長が続くわけがない、という危機感を背景に、指針書を初めてつくったのは創業7年目でした。初年度は数ページでしたが、それから社員の意見を積極的に取り入れながら改訂を進め、いまでは200ページを超えるボリュームになりました。経営理念からクレド、アクションプラン(後述)などを一冊に凝縮し、いまでは全社員の意識を共有するための重要なツールになっています。

指針書は組織体制が固まる10月ごろから改訂作業を始め、毎年内容を見直して刷新します。全社員参加でつくるプロセスを通じてボトムアップの組織が実現し、社員のやる気や参画意識が会社の風土づくりに役立っています。

でも実は最初の数年間は社員の机の中にしまい込まれたままで、まったく機能していなかったんです。もっと使えるものにせなあかんと反省し、各部署の目標を数値化したアクションプランを策定することにしました。

ですが、社員にとっては自分で考えた計画ではないため、当初はやらされ感があったんでしょうね。やっぱりうまく機能しませんでした。そこで各部署のプランをメンバー全員で考えるようにした結果、社員が自然とPDCAサイクルを意識するようになり、「ここはこうしたい」と自主的に改善してくれるようになりました。

うちの会社に限らず、上から押しつけられた目標なんて、現場では誰も達成しようと思いませんよね。私も途中でそのことに気づきました。それ以降、理念を共有しさえすれば、それを達成するための方法は任せる、という方針に切り替えたんです。そうやって経営陣が社員を信じて任せ切り、経営に参画するハシゴを少しずつ下ろしていきました。すると、みんな全力で応えてくれるんだというのがわかったんです。

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>>>企業風土はどのように変化してきましたか?

実は、230人規模になったいまでも、社内の風通しは「超」がつくほどいいんです。底抜けに明るい社員たちが志を共にして、創業時と同じようにまるで家族のようにワイワイと楽しく働いています。だから不思議がられるんですよ。その規模でどうやって組織をマネジメントしているんですか、って。

株式会社TAT

取締役副社長

髙野 芳樹氏

http://www.nailtat.com/

ネイリストやネイルサロン、スクール、専門学校などに材料を販売するネイル用品専門商社。“お役立ち”をキーワードにネイルサロン、スクールの顧客管理や来店促進などの運営面を助ける「ネイル業界支援業」も展開。