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【長編】部活動ノリでスタートした会社がいまや売上げ70億円。 それでも創業時の社風を守り続けている理由

2014.06.09

まずマネジメントいう点に限っていえば、いまは事業計画や人事考査などをすべて数値化し、細かく管理しています。先ほどのアクションプランでは、たとえば残業時間や残業金額、予算達成率、さらに細かい点では社内勉強会の参加率や感想文提出率まで管理しています。これだけを聞くと、管理型マネジメントの典型で、現場はさぞ窮屈な思いをしているんだろうなと思いますよね。

でも先ほどもいったように、アクションプランの目標づくりはトップダウンではなく、現場に権限委譲してやってもらっているんです。自分たちで目標を決め、自分たちで管理し、自分たちで改善努力する。あくまで現場でPDCAサイクルを回すことに重点を置いています。自分たちで決めた目標だから、モチベーションは高まるし、達成しようと主体的にがんばってもらえます。

そのうえで、最終的には、トップが社員一人ひとりの幸せをどこまで本気で考えているか、にかかっていると思います。そもそも僕は、この会社に入るまでは音楽で生きていこうと思ってたんです。大学を中退して音楽に明け暮れて、ほんまロクでもない人間やったんですよ(笑)。学歴もなければ職歴もない。そんな僕だから戻る場所なんてないし、スタッフのみんなに大きなことがいえるわけでもなく、ただただ社員を幸せにしたいって思いだけでやってきました。クサいけど(笑)、本音です。

 

>>>組織化の過程での弊害は?

いまが、その弊害が表れている時期かもしれません。最近は利益率や経費削減を追求しすぎるあまり、会議でも数字の話ばかりなんです。もちろん数字を切り詰める努力は必要ですけど、行き過ぎるとギスギスしてきますからね。うちのモットーは社員が仕事を楽しむこと。その社風が失われたら、TATじゃなくなってしまいます。

だから最近はスタッフのみんなに、「なんかあったら俺が責任とるから、波風立てていこうぜ」と事あるごとに投げかけています。幸い破天荒な社員はたくさんいますから(笑)、やり過ぎやん、と思うほど突き抜けた行動をとってほしいんです。

社員が楽しんで働ける会社をつくりたい――その表れの一つが卓球台です。会議室に卓球台を無造作に置いて、お昼休みの時間などに自由に遊べるようにしています。たまに試合もやったりして。社長も参戦するんですよ。

ほかにも週に1回、社長直々に料理の腕を振るう「直樹の幸せ食堂」を開いています。当社は住宅街にあるから、近所に食事ができるお店がないんです。社員のみんなに喜んでもらおう、というのが食堂の目的です。

こんな感じで、管理を強めては、また緩め、また引き締めて……と、行きつ戻りつしながらバランスをとり、組織体制の充実を少しずつ図っています。この緩急のバランスをとるのが我々経営者の仕事なんでしょうね。

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>>>離職率2%以下と伺いました。

おかげさまでスタッフには本当に恵まれています。当社は新卒採用と縁故採用の2つのパターンがあります。とくに後者が多いですね。スタッフには、友だちや家族でいい人がいればどんどん紹介してもらうようにしています。親子で働いている人もいれば、友だち同士で働いている人もいる。いとこを連れてきたり、兄弟を呼んできたりする人もいる。

縁故入社は会社としても助かっています。家族や友人にいい会社を紹介したいと思うのと同じように、会社に対してもいい人材を紹介したいと思うものですよね。今いる社員に楽しく働いてもらうことで、結果としていいメンバーが集まってきてくれるようになります。おかげさまで採用面で困ることもなく、辞める人もとても少なくて…。たしかに離職率は2%以下ですね。

 

>>>では最後に今後の展望をお聞かせください。

僕たちは「ネイルは人を幸せにする」って本気で思っているんです。たとえば街中でティッシュを配っている人がいますよね。その人たちがネイルをすると、仕事の効率が上がるらしいです。ネイルは人を癒したり、意欲的にさせたりする効果が期待できる証拠だと思います。

でも、現状の日本では、ネイルの普及率は10~15%程度です。この普及率を10年以内に6割程度まで引き上げるため、微力ながらも普及活動に力を入れています。ネイル商材の当社の市場シェアは約3割なので、普及率が6割に拡大したと確定すれば、売上高は150億円を超えられると考えています。

夢は、自社の商材で世界を平和にすること。たとえば平和を象徴するネイルのデザインを開発し、世界中の人びとがそのネイルをしてくれたら素晴らしいと思いませんか。言葉と違ってデザインは国境を超えますから。ネイルを通じて世界の平和に貢献したい、そんな夢のようなビジョンを全社員で共有し、今後も楽しく仕事をしていきたいと思っています。

 

株式会社TAT

取締役副社長

髙野 芳樹氏

http://www.nailtat.com/

ネイリストやネイルサロン、スクール、専門学校などに材料を販売するネイル用品専門商社。“お役立ち”をキーワードにネイルサロン、スクールの顧客管理や来店促進などの運営面を助ける「ネイル業界支援業」も展開。