抗酸化技術に賭ける79歳シニアベンチャー

松下氏は自身が開発した独自の抗酸化技術を世に送り出すため2年半前、76歳で起業した。当初2年間は売り上げゼロ。シニアベンチャー創業支援資金も底を突いた。だが、無類の実験好きが積み重ねた地道なデータがエンジンとなって、アンチエイジングへの期待につながる事業が加速し始めている。

 
◆ カルシウムイオンに魅せられて

―― 技術のコアは「抗酸化力」です。この研究テーマとの出会いは。

武田薬品工業の十三にある研究所で60歳前まで勤めていました。研究畑ですが分析が主で、新しい薬ができたときにその主成分の分析法を新たに確立する研究などを行っていました。定年退職し、しばらくゆっくりしようかなと思っていたんですが、知人を介して、あるベンチャー企業からケミストを紹介してほしいとの話を聞きまして、じゃあ、そこでもうひと頑張りしようか、と入社しました。

その会社は抗酸化作用を持つカルシウムイオンを使って事業に取り組もうとしていました。日本の水道水には滅菌消毒に使う塩素が微量に含まれていて、強い酸化作用を持っています。そのために肌や毛髪を傷めるだけでなく、体内で細胞を傷つけたりするので、老化や疾患の原因になっているという説もあります。

カルシウムイオンには塩素をイオン化して無害にする働きを持っているほか、水の大きな分子集団(クラスター)を小さなクラスターに再編する性質があり、これによって細胞への浸透性、吸収がよくなります。

ただ、カルシウムイオン水の製造は容易ではなかったようで、当時の市販品は貝殻や植物の種子を原料とし、発酵法で造られていたので製造に半年くらいかかる上に、できあがったものはとても臭いが強いものでした。このカルシウムイオン水をもっと簡便にかつ安定的につくる方法、そして更に抗酸化力を高め、臭いの少ないものにする方法を見つけるべく、実験の日々が始まりました。

 
◆ 苦難の末に「夢の種」を開発

―― 開発のプロセスは大変でしたか。

資金難の会社だったので、最後の8年程は実験環境が劣悪でした。座るスペースもないような狭い部屋で、ずっと立ちっぱなしで実験を行っていたために途中で腰を痛めてしまいました。また、給料が支払われなくなり、交通費も出なくなりました。社長は金策に走っていてお金をどこかから都合をつけてくるからと口約束ばかり。

それでも続けられたのは、実験が大好きだったからです。自分で仮説を立てて、さまざまな可能性を試し、データを検証していく作業は必ず数値として結果が出るので励みになります。年金を取り崩しながら実験を続けました。

そして、ついに自分の思い描いた抗酸化剤「NIC(New Ionized Calcium:新規開発イオン化カルシウム)」(MyNIC-S)が完成しました。これはさまざまな商品としての派生が期待できる「夢の種」です。ただ、これを世の中に出していくためには、第三者による評価が必要ですし、売っていくための人材も必要です。到底その会社にはそれだけの余力はありませんでした。

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2019年07月30日
株式会社オリーブ技研
代表取締役社長  
松下 良博氏
事業内容/抗酸化液の開発・製造

今月の町工場で働くオトコマエ

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