数字の公開と分業制で一体感 オープンな雰囲気作りを
以前は、野球のバッターで言えば来たボールをとにかく振っていました。大手との相見積もりになると、あんたのところは小さいんやから安くしてくれるんやろ、と言われるわけです。「いやいやうちは違います。お客様とじっくりお話をして提案するスタイルですので」と言っても理解してもらえない。それで、ある時からうちと向き合ってくれるお客様だけを大切にした商売にしようと決めました。本社の1階にショールームがあるんですが、そこに足を運んでいただけるお客様に絞りました。
経営者って恐ろしく孤独なんです。お金の流れが詰まって、明日お客様に払うお金がない、給料をちょっと減らさなあかん、というような時でもだれにも相談できません。そこで導入したのが個人採算会計。私も含めて社員全員の売上げ、経費を全部見えるように公開しました。それから、一つのリフォーム案件を1チーム5人の分業制で当たるようにしました。最初に用件を承った「情報元」、顧客の要望をかみ砕いて適したチーム編成を組み立てる「コンサル」、契約まで導く営業担当者の「プランナー」、内装の色柄等を考える「コーディネーター」、そして引き渡しまでのスケジュールを管理する「コンストラクション」。それぞれの品質も上がるし、後ろの工程で評価してもらえる人がいるから孤独感がなくなります。
うちはお客様に「クレームゼロ」などという標榜はしません。クレームはどうしたってついて回るもの。それなのに「ゼロ」とうたうと逆に隠ぺいが横行するようになる。すべてをオープンにする雰囲気をつくっておいて、お互いがアカンことはアカンと言える雰囲気をつくることが大切。だからこそ、一人で仕事を完結できない分業制は大切だと思っています。
当社が社員全員で共有する経営目標数値は税引き前利益の数字です。これを意識してもらうため、この配分(右図)を明示しました。納税した残りの50%のうち25%は会社としての体力をつけておくための内部留保。残り25%のうち半分の12.5%はお客様のためのサービスに使います。残り12.5%の半分は社員の給与に反映させ、半分は株主への配当に向けます。数字はすべて公開していますから、社長は嘘言ってへんなということが分かるし、利益に対する意識が高くなります。現在働いてくれている社員のうち在社年数16年以上が35%、10年以上が50%にまで増えました。驕りではなく、優しさ、深い経験と強さを持ってこれからの商売に当たっていきます。
▲数字を公開することで社員の利益に対する意識が高まった。
▲本社事務所1階に併設されたインテリアショップ。リフォームを考えている顧客には必ず足を運んでもらい、じっくりヒザを突き合わせながら提案する。
▲毎朝の朝礼は、現場に出向くチームと、本社・店舗に出勤するチームと2回に分けて行っている。理念の唱和は、大声を張り上げて読むのではなく、電話で顧客と話す時のような声で、浸透させる効果をねらっている。
株式会社シンプルハウス
代表取締役
山本 武司氏
設立/1982年(1990年、株式会社シンプルハウスに社名変更)
従業員数/25名
事業内容/建築設計事務所、リフォーム(住宅・店舗)、天満の本社事務所にはインテリアショップも併設する。顧客から直接仕入れたマンションの部屋をリフォームして販売する事業も展開している。