異文化を受け入れる事で生まれる進化
池田氏と台湾出身の王氏、中国から来た孫氏、そしてインドネシア出身のケルヴィン氏…と国際色の豊かな人たちが和気藹々と関西弁で話し合っているのは、テレビなどの映像制作を手掛ける株式会社ピー・キューブ。
設立から20年以上の歴史を持つ同社が外国人の採用に積極的になったのは、10年ほど前からだという。
創業者である池田氏は、テレビに加え、自社企画として地域の魅力発信を目的に自治体のPR動画の制作を始めたが、その中の一つで“英語版”を制作。手応えがあったことから「外国語に堪能なスタッフを加えて、ビジネスを強化しよう」と考えたのが採用のきっかけだという。
その後、参加した留学生向けの合同説明会で衝撃を受けたそうだ。
当時、池田氏の中で外国人=欧米系というイメージがあったが、「実際、説明会で一番多かったのはアジア系の参加者。失礼ながら『あれ?』という感想でした」。
しかし、慣れないスーツ姿で、眼を輝かせて熱心に説明を聞く姿に胸を打たれ、「彼らの『働きたい』想いが伝わってきて…こんな情熱を持った人たちと働くと楽しいだろうなぁ、と意識を変えられました」と当時を振り返る。
しかし実際の採用には試練もあったという。
「言葉の壁で業務が滞らないか」「時間にルーズじゃないか」と社内で大反対にあい、また取引先からは「資金繰りが苦しいのか」と言われたこともあった。今でこそ日本人の理解が進んでいるが、当時、外国人労働者に対する印象は良くなかったという。
「でもね、実際に働き、一緒に御飯を食べたりすると不安はすぐに無くなりましたし、取引先の打ち合わせに同行させて本人と会わせると『いい人を採用できたね』と言っていただいたり。外国人労働者を迎えるというのは、結局私たち自身の無知や偏見の克服が重要なんだと実感しました」。
池田氏は、そんな事象を自身の新卒入社時と重ねて語る。
「男女雇用機会均等法が施行された年で『女性が男性と同じように働けるはずがない』という世の中の雰囲気は、今の『外国人が日本人と同じように働けるはずがない』という排他的なムードとそっくりです。日本には“歪んだ平等意識”があるが、同じである必要はない。得意な分野が異なるだけ。むしろ平均化された組織はこれからのAI社会に生き残れないのでは?と思います。外国人の新鮮な思考や発想に触れて自分たち自身が進化すれば、もっと可能性が広がると思います」。
(取材・文/松畑聡 写真/福永浩二)