金属加工全般のワンストップサービスをめざす
八木製作所がめざすのは金属加工のワンストップサービスだ。同社が受注の窓口になって品質、納期、コストを管理しながらそれぞれに得意な金属加工技術を持つ協力企業と連携して完成品を納める。
「一つから量産まで。小さな部品から大きな筐体、急ぎの試作品まで。うちに頼めばあらゆる金属加工はなんとかなると言ってもらえるのが理想の姿」と八木氏は言う。
レーザーカットからプレス、曲げ、溶接、組み立てまでを担い、金型も自作する金属加工一貫メーカーの3代目として4年前に事業を承継した。
それまでも大手メーカーを主取引先に安定した受注を獲得していたが、社長就任のタイミングを機に「守りから攻め」へと転じる。「入ってくる仕事をただ真面目にこなすだけではなく、日本が誇るものづくりの技術をしっかり残したい。そして大阪の同業者が潤うようにしたい」と考えてのことだ。
5年前の専務時代に、廃業した大物金型を製作する企業に代わる新たな協力企業の紹介を求めて大阪産業創造館を訪ね、「ビジネスチャンス倍増プロジェクト(※)」のマッチングナビゲーターの北尾氏と知り合った。
八木氏が掲げるビジョンに共感した北尾氏は手持ちのリストの中からさまざまな企業を紹介。八木氏も「北尾さんにせっかく紹介していただいた先とは、すぐにではなくともいつか必ず一緒に仕事をしたい」と期待に応えようとしている。
そのようにして築いたネットワークをベースにメーカーから3次元プレス部品を組み合わせた製品の一括納品の仕事も引き受けることができた。
半年ほど前から権限委譲の一環で、ビジネスマッチングの担当を技術・営業部門長の山田氏に委ねている。その山田氏が企業の紹介を受けた際に心がけているのが「すぐに訪ねる。指値で依頼する。お互いの工場を見る」。そして「うちがされていやなことは相手に対してもしない」ことだ。
熱く、本音で向き合う姿勢の中からスピーディな納期が実現し、依頼し、依頼される関係が築かれ、さらに結びつきが強くなる。
ネットワークを広げる一方で、八木製作所自身も新たな技術の獲得、生産プロセスの効率化に挑み続ける。「協力企業の多くは自社で営業部隊を持っていない。当社の技術、コスト、納期への信頼度が取引先にさらに認知され受注を増やすことができれば協力企業にも貢献できる」と八木氏。
北尾氏と二人三脚でワンストップサービスの間口をさらに広げようとしている。
※ビジネスチャンス倍増プロジェクト:大手企業の技術系OBが仲人役となって、 販路・技術提携先を紹介する事業
(取材・文/山口 裕史)
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