省エネ・健康管理 広がる可能性
「におい」や「ガス」を検知するセンサーの製造を手がける荒木産業(大阪市生野区)。同社のセンサーは、大手メーカーの空気清浄機や冷蔵庫、アルコール・口臭チェッカーなどに組み込まれている。ここ数年の空気環境を改善するマーケットの広がりや、消費者の安心・安全への意識の高まりから、従来のセンサー技術を生かした自社製品開発に取り組んだ。
第1弾として開発されたのが「オートリフレッシュ」だ。この商品は、換気扇とコンセントの間に取り付けるだけで、室内のたばこや料理の煙などの空気の汚れや温度を感知し、自動で換気扇を作動。シンプルな発想ではあるが、面倒でつけっぱなしになりがちな換気扇の作動をスマート化し、消費電力を大幅に削減する効果があるという。昨年から販売を始め、現在は通信販売などによって売り上げを伸ばしている。
こうした「におい」や「ガス」を感知したり、計測したりする技術は、今後さまざまな新市場での展開が期待されている。例えば、同社が開発に携わっている口臭測定器は、口臭から口腔(こうくう)内の状態を測定。アプリケーションで管理することで、口腔衛生や健康管理に活用することもできる。デジタルコンテンツでは、視覚、聴覚にとどまらず、嗅覚(きゅうかく)にも訴求する4D技術が注目を集めており、においを作り出す技術開発のためには、測定技術が必要とされている。植物工場などの農業分野では、ビニールハウス内の空気を測定することで、植物が発するガスにより、栄養状態を把握できるようになるという。
いずれも、すぐに実現できるものではない。しかし、同社のようなあらゆる「におい」を感知し、コントロールする技術は安心、安全、快適、便利な生活には不可欠であり、これらの技術とさまざまな分野の技術の掛け算により実現されるものである。中小企業ならではの柔軟性を持ち、新たな取り組みに積極的な同社の活躍に注目したい。
(大阪産業創造館 シニアプランナー 井上史之)
▲空気の汚れや、温度を感知し、自動で換気扇を作動させる「オートリフレッシュ」
荒木産業株式会社