技術の力で日本と世界の「架け橋」
私たちが普段手にしているスナック菓子や袋入りの飴を包んでいる菓子袋の両端にあるギザギザは、ピロー包装機と呼ばれる機械によって作られている。手で開けやすくする工夫の一つなのだが、開けやすさに差があると感じたことはないだろうか。この差は、包装機用カッター刃の品質が生んでいる。カッター刃には高い精度や耐久性などが求められる。
そうした包装機用カッター刃の提供を行っているのが、有限会社山本圭商店(大阪市東成区)だ。同社は、1930年に創立され包装資材販売を主な業務としている。包装機用カッター刃もその業務の一環として食品・菓子メーカー向けに開発・販売してきたものだ。
通常、包装機用カッター刃はハイスと呼ばれる高速度鋼で作られており、定期的に交換が必要な消耗品の一つである。交換作業は包装機を停止させて行うため、作業中は生産が停止してしまう。食品・菓子メーカーにとっては商品の生産数量増加、保守コストの低減、包装機の負荷軽減につなげるためにも、切れ味を維持したまま交換回数を減らすことが課題となっている。
この食品・菓子メーカーの課題に応えるため、同社では、ハイスではなくタングステンカーバイドとコバルトの超硬合金によるカッター刃を提供している。3代目社長の高畠宏之氏は「お客様の課題を製品に反映することを心がけている」と語る。こうした姿勢が評価され徐々に取引先を拡大してきた。
しかし、食品・菓子製造の現場でカッター刃交換回数を減少させると、同社にとってはリピート受注までの期間が長くなってしまう。この課題を克服するため海外の販路を開拓する。これまで国内での納入実績のある食品・菓子メーカーの海外拠点を中心に展開していく計画だ。
1年目に中国、2年後にベトナム、タイ、インドネシア圏、3~5年後に北米、ヨーロッパへの販路拡大をめざす。外国語版のカタログやWebページの作成に追われる社長は「世界の食品メーカーに日本の優れた製品を提供し、日本と世界の架け橋になりたい」と抱負を語る。
(大阪産業創造館コンサルタント 服部繁一)
▲「日本の優れた製品の存在を世界中に知ってもらいたい」と語る高畠宏之社長(左)