産経関西/産創館広場

10秒あれば、守れる「いのち」

2015.01.19

地震が発生した際、大きな揺れがいつ来るのか知りたいと思う人は多いはず。

「○秒後に震度△△の地震が来ます!」と大きな揺れの到達の前に知らせてくれるサービスを提供するのは、株式会社アイザック(大阪市中央区)。大きな揺れが到達してから行われるテレビやラジオの地震情報と違い、同社の緊急地震速報サービスは、震源地で発生した地震をいち早くキャッチし、大きな揺れの到達前に知らせてくれる。特長は、最初に伝わる「小刻みな速い揺れ」と、その後に伝わる「大きな遅い揺れ」の2つの揺れの速度差を利用して、大地震発生時の初動対応と安全のための時間を確保し、減災につなげることだ。

オーダーシステム開発などを行う同社が、地震速報受信機の開発を始めたきっかけは阪神淡路大震災。浜崎重孝社長は「亡くなった方の8割強が建物の倒壊。大きな揺れが来るまで、数秒でも早くわかれば、命を守る時間を稼げたのでは」と語る。

受信端末は、住戸やマンション、学校や大型施設、工場などに設置し、インターホンや館内放送、エレベーター、耳の不自由な方への視覚的な告知など、さまざまな機器との連動や制御ができる。塾や学校に通う児童や生徒の安全確保のために端末の無料提供も行っているという。

昨年12月、地震速報専用機だった前機種を一新し、新型機『ゆれぽーと』の販売を開始した。大きな違いは端末の高機能化。昨今、火山の噴火や台風、ゲリラ豪雨や爆弾低気圧など、命にかかわる自然災害が頻発しており、脅威は地震だけではない。そのため、総務省の「災害情報共有システム(Lアラート)」との連動を視野に、地震以外の自然災害についても、命を守る時間を稼ぎ、減災につなげるマルチ端末としての普及を目指している。

同社は「一日も早く、『ゆれぽーと』が各家庭や職場の命を守る災害情報の総合ステーションになるよう、システム開発とその普及に全力を尽くしたい」と強調。地震以外の各災害情報はアプリとして配信できるよう、システム開発にも力を注いでいる。

阪神大震災から20年。IT(情報技術)をベースに「命を守る10秒」へ取り組むアイザックに期待したい。

(大阪産業創造館シニアプランナー 内田貴美代)

aizakku

▲「ゆれぽーと」。端末価格は10万円を切る(前機種の半額以下)。24時間365日、3分毎に受信機の死活監視を行う

 

株式会社アイザック