こだわりの紳士靴、全工程を国内で
「『RND』というブランド名は車のギアの種類から付けたんです。『完全停止』を意味する『P』を除いて、常に動き続けようという意味が込められています」
しゃれているのは名前だけではない。商品も洗練されている。
株式会社STANDARTH(大阪市旭区)は、靴の製造企画会社だ。紳士靴というとインポート商品が大勢を占めるが、同社が展開するのは全て日本国内で生産するオリジナル商品。使用する皮革素材はもちろん、木型の製作から裁断、縫製に至るまでの全工程を国内で完結させている、正真正銘のメード・イン・ジャパンだ。
同社の河合俊行社長のこだわりは、皮革産業が盛んな姫路や奈良に足しげく通い、製法によって産地を使い分けていることだ。職人とのコミュニケーションの中で、新しい企画やとんがったデザインの発想を得ることもある。同社の設立は2010年。起業したばかりのとき、河合社長は海外向けに日本の商品を売る事業を立ち上げた。たくさんの商品を扱ったが、次第に「自社のオリジナルを作りたい。自分にしか作れない物があるはずだ」と考えるようになった。
折しも時代は、日本製品が海外勢に席巻されていた頃。「このままでは日本の技術力が廃れてしまう」と日本人の手だけで作る靴に勝負をかけた。小さな会社のオリジナル商品ということで当初は苦労も多かったが、現在では社長のこだわりと製品の高い品質が認められ、阪急百貨店で扱われるほどにブランドは成長した。
「うちの靴は一生履けるんですよ」と話す河合社長の言葉は誇張ではない。良質の皮を丁寧に加工すれば、驚くほど丈夫で使い込むほどに味の出る靴ができる。社長が店頭でお客さんにストーリーを語ると、決して安くはない靴を皆納得して買っていく。
12月3日から2週間、阪急百貨店で国内のカバンメーカーや家具メーカーとのコラボレーションイベントを開催し、日本のものづくりの良さを再認識してもらう計画も進行中だ。
河合社長が経営のハンドルをさばくRNDという名の車。ブランド力の拡大と日本のものづくり復権に向けて、まだまだ加速が続きそうだ。
(大阪産業創造館 シニアプランナー 竹内心作)
▲日本製の機能性とデザインに優れた靴が店頭に並ぶ
株式会社STANDARTH