「多品種小ロット」 ベトナム人社員に期待
団塊世代の一斉退職により多くの企業が抱える人材確保の問題。それに対し、新たな取り組みで解決を試み、成長へのバネにしようと挑戦を続けるのが大福鉄工所(大阪市淀川区)だ。
同社では2000年代後半から熟練工の退職が続き、新たな人材の確保が喫緊の課題となった。国内大手の人材紹介会社や公的機関による人材採用サービスも利用したが、大きな成果は得られない。
そんな中、3年間限定で外国人技術者を斡旋(あっせん)してくれる民間サービスを利用した。採用したベトナム人の熱心さや習熟の速さに満足し、その後は長期雇用を前提とした就職斡旋サービスを利用しながらコンスタントにベトナム人を採用している。
現在勤めるベトナム人は5人。2年前に来日したウゴツク・ヴィン氏は、他のメンバーとともに、自ら日本語学校を探して勉強しているという。来日後2~3カ月はまともに会話ができないため、業務が覚えられずに苦しんだが、今では難しい業務もこなせる。彼らの熱心な働きぶりにも支えられ、「十分な成果を得られている」と大福豊社長は目を細める。
得意とする産業機器市場が縮小する中で、新たに進出を試みているのは医療機器や介護産業だ。多品種小ロットの生産体制が求められる分野に参入するためには、一つ一つの製品を考えながら製造する現場の力が不可欠になる。現在勤める25~32歳のベトナム人社員が、今後どれだけ活躍してくれるかにかかっていると言っても過言ではない。
最近、大福氏の紹介で近隣の同業者もこの斡旋サービスを利用。ヴィン氏にとっても、同僚のみならず近隣の会社に同郷出身者が勤めていることが、安心して勤務できる理由になっている。
外国人社員の活用には粘り強い人材育成が必要だともいわれる。しかし、自社に必要な情報は積極的に取り入れようとする大福氏の活動は、前向きな人柄に裏付けされている。今後もさまざまな形で挑戦を続け、この難しい局面を乗り切ることだろう。
(大阪産業創造館 プランナー 坂田聡司朗)
▲ベトナム人社員のウゴツク・ヴィン氏(左)と大福豊社長