Bplatz press

【あぁ、麗しのファミリービジネス】Vol.14 No more 大塚家具「お家騒動」

2015.03.25

いやいや、ファミリービジネスを専門と標榜している立場として、どうしようかなーと思ってたんですが、一応触れとこう(笑)。
大塚家具のいわゆる「お家騒動」。

マインド重視のたたき上げの創業者とロジック重視の美人後継者。見た目もバックグラウンドも正反対な「マスコミ受けする」親子だったことが手伝って、株にも企業経営にも興味がなかったお茶の間を巻き込んで大騒ぎ。
でも、今回の件をマスコミが「お家騒動」という言葉を大げさに連呼して面白がっていることに私は大いに違和感を感じてます。

だって大塚家具はちっとも特別じゃない。だって、何らかの形でファミリービジネスに携わっている人からすれば、この手の小競り合いは同族企業では「超あるある」ですよ。日本の会社は9割が同族。多かれ少なかれ同じようなことがそこら中で日々起きてます。うちの実家だって似たようなもんでしたもん(笑)。大塚家具は、たまたま上場企業の同族企業だったので目立っちゃった。

血縁だから土壇場でも踏ん張れる力を発揮するけど、血縁だからこそ一度こじれたら大変。
同族継承って、そもそもそんなもんなんです。

だって家族でありながら、株主だったり社長だったり社員だったりするわけですから。
それこそ割り切れない話が毎日テンコ盛りです。

でもそんなの家族親族が関わってるファミリービジネスの家に生まれた人なら肌感覚でわかってますよ。なんせ小さな頃から、会社にまつわる親や親戚の微妙なやり取りを見てますから。だから「下手したら親族との関係もギクシャクさせるかもということは覚悟の上で」家業は継ぐものだと彼らは知ってます。

でもその一方で同族企業の経営者の「存続への執念」はハンパない。
大塚家具は、マスコミ巻き込んで社内(家族)の泥仕合を公開しちゃったことは問題だけど、経営のバトンを引き継ぐ親子が経営の方向性を巡って衝突するほうがむしろ健全。
私の周りの後継社長も、先代と何の衝突もなく引き継いだ人はほとんどいません。真剣に会社の未来を、つまり「存続」に執念を持っている人たち同士だからこそ、衝突してるんです。

だけど、今回の騒動で「だからファミリービジネスはねー・・・」というネガティブな風潮に持っていくことが、将来の日本経済に与えるダメージになることをわかってない人が多すぎ。

実は、最近の調査で「上場非上場に関わらず、同族企業は非同族企業よりも業績が優秀」という結果が出ています。
面白いのは「不況期下での」同族企業・非同族企業との比較です。

非同族企業は、株主最優先で短期的に利益をねん出するために、リストラで利益の減少幅を小さく食い止めたものの、雇用も売上げも減少しています。

一方で同族企業は、利益は大きく減少したものの、売上げも伸ばし、雇用も拡大。企業の継続性を重視しているからこそ、短期的な利益よりも雇用を守ろうとするのが特長です。

これって社員の立場から見ると、不況期でも守ってくれる会社と解雇される会社、どっちで頑張れるかって話ですよね。
一時の利益よりも長期的にもたらされる効果を優先する同族企業の存在で、多くの人の生活が守られていることを忘れちゃだめだと思います。

小さな島国NIPPONが経済的に発展してきて、雇用が守られてきた大きな要因は、日本企業のほとんどがファミリービジネスだったからです。
それが最近では後継者不在の企業が急増。ここ10年で同族承継は6割に減少しました。
こうやって、「お家騒動」「お家騒動」とスキャンダラスに面白がってネガティブキャンペーンをはり、日本経済を支えてきたファミリービジネスがどんどん少なくなって・・・・そして最後に困るのは私たち、日本の社会です。

不正を働いたり、カジノで資産すったり、豆で飛行機の出発時間を変えちゃうような経営者がいるファミリービジネスはどんどん叩いてください。
でも今回の件をワイドショー化するのは、もういい加減やめましょうよ。

(出典)
(地域経済活性化要因実態等調査(地域経済におけるファミリービジネスに関する調査等事業))報告書

事業承継を中心とする事業活性化に関する検討会 中間報告

yamano

【筆者Profile】
大阪産業創造館 山野 千枝
本紙「Bplatz press」編集長。
数多くの中小企業を取材する中で、家業を受け継ぎ、事業を展開する経営者の生き様に美学を感じる一方、
昨今の後継者不在問題を憂いて「ファミリービジネスの事業承継」をテーマに
現役の後継社長とともに関西学院大学、甲南大学、関西大学で教鞭をとる。
実家も四代続くファミリービジネス。