産経関西/産創館広場

口コミ紹介だけで107年続く

2015.03.16

創業107年。大阪市西区に密着し、口コミだけで事業を続けてきた工務店がある。株式会社中山工務店だ。

4代目の中山靖社長は長寿企業となった自社についてこう語る。「目の前のお施主さまをひたすら大事にすること以外、あまり何も考えてこなかった。会社を大きくしたい、なんて思いがなかったから長く続けてこられたのかもしれない」

同社は、建築業界では珍しく、自社で専属大工を抱えている。仕事の有無に関わらず毎月固定の人件費がかかるが、社長はむしろそれをよしとしている。理由はシンプルだ。「職人が安心して、いい仕事に専念できる環境をつくりたいから」。この思いが職人に伝わり、職人は技を磨くことで会社に貢献する。

大阪市内中心部にありながら、数千本もの木材を保管できる倉庫を所有している点も珍しい。職人の頭の中には、木材のリストが常にインプットされている。「あの木材をこう使えば、お施主さまの要望以上の空間に仕上がる」と判断でき、それが「依頼して本当によかった」という顧客の感動を生み、自然に次の紹介へとつながるのだ。

現在、事業の8割はリフォームだ。豊富な木材のストックを生かした、安らげる空間提案を得意とするが、実際には、浴室の設備交換といった修繕案件も多い。だが「小さな仕事が大きな仕事につながる」と、金額の大小に関わらず取り組む姿勢は変わらない。こうした真摯(しんし)な姿勢が信頼を呼び、受注件数は年間300件を超えるまでになった。

いわゆるセールス活動は一切行わないが、施主宅には季節のあいさつを兼ねて年2回は訪問する。不具合を察知すると、施工を担当した職人をすぐにメンテナンスに向かわせる。ライフスタイルの変化に気づけば、その時の施主にとって一番住みやすい間取りへの変更を提案する。プロとして常に住み心地の良さに気を配ることが会社のポリシーだ。

高齢化に伴い、今後は改築需要のさらなる増加が見込まれる。長年住んだ家への愛着を残しつつ、介護がしやすく、家族がずっと笑って過ごせる家を提案すること。“中山らしい家づくり”はまだまだ進化しそうだ。

(大阪産業創造館 プランナー 池田奈帆美)

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▲オリジナルの建具を製作。職人技の高い加工精度を誇る

 

株式会社中山工務店