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駆使するのは「ヒトメディア」 体育会系学生が日本の会社を強くする

2012.12.10

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独自の事業モデルを築くには「可能性を狭めないこと」

 大学生のうち体育会系の部活に属する学生は10%にも満たないという。その“貴重”な体育会学生を新卒採用で確保したいと考えている企業は多い。「目標に向かって努力する姿勢や、学内外との渉外などを経験したコミュニケーション能力を企業は期待している。以前は花形の選手ばかり注目されていたが、今は4年間レギュラーになれず裏方で支えた人材も重宝がられている」と山崎氏。その体育会系学生の採用支援事業のパイオニアがアスリートプランニングだ。

 創業までは曲折があった。大学で体育会ヨット部に所属し、「いずれ自分で事業するために
経験を積みたい」と、卒業後は先輩が立ち上げたばかりの体育会系の学生の採用を支援する企業に入社した。その後、同期の友人に引っ張られ会社を興す。ここでは「命がけで彼の言うことを信用して忠実にこなす」ナンバー2に徹した。だが経営は行き詰まり破産する。

 ここで初めて「自分の意思を持って事業をしよう」との気持ちが芽生えた。「やらされているもどかしさもあったし、体育会人材の採用支援をぜひ続けてほしいというお客さんの声にも押された」。会社を成長させることを第一に考え、大手の採用支援企業の営業活動を代行したり、求人企業から採用ツールの制作や人事を請け負ったり、できることは何でもやった。多岐にわたる仕事の経験を積む中で見えてきた方向性は、それらのすべてを自社完結で行う事業モ
デルだった。「これがやりたいとか、これしかやらない、で可能性を狭めるのではなく、いろいろやってみて初めて何をやりたいかが見えてくるもの」だと気付いた。

体育会系学生8千人との面談によるデータベース化

 「同業他社と同じことをやっていては生き残れない。そのためには既成概念にとらわれないこと」と山崎氏。力を入れたのは、学生とのネットワークづくりだ。各大学の体育会の部室をスタッフが訪ね、学年ごとの部員数、練習時間まで調べ上げた。練習や試合に忙しい学生はなかなか就職活動に時間を割けない。学生が求めている情報を提供し、アドバイスをするうちに学生との信頼関係が出来上がっていった。この役割を山崎氏は「ヒトメディア」と呼ぶ。

 「企業は就職サイトに載せるだけでは膨大なエントリーから、学生を絞り込まなければならない。一方、学生はやみくもに就職活動を行わなければならない。我々がその間でお互いのニーズを合わせる」。

 東京6大学、関西7大学の体育会限定の就職イベントは毎年多くの学生を集めている。「ヒトメディア」の強みを最大限に生かし、企業が必要とする人材を成果報酬型で橋渡しする人材紹介業も始めた。そのために全国8000人もの学生と一人ひとり面談し、性格まで含めたデータベース化を行っている。「大切なことは、学生の本質を明確にし、そのような素質を持っている学生を探している企業の採用に結びつけること。それは日本の企業の強さにもつながるはず」。9割を超える企業のリピート率で、山崎氏の確信は深まっている。

株式会社アスリートプランニング

代表取締役

山崎 秀人氏

http://www.athlete-p.co.jp/

設立/1997年 従業員数/35名
事業内容/大学公認体育会学生に特化した採
用メディアの開発・販売・運営。「就職リーグ」
という採用イベントのほか、新卒紹介、中途紹
介など体育会人材に特化した人材サービスを展
開している。