印刷の概念超えた特殊印刷
プリペイドカード印刷をはじめ、特殊印刷を小ロットから提供する株式会社アンリ(大阪市東成区)。テレホンカードが全盛だった1980年代後半、その生産で大きく業績を伸ばし、1990年の花博(国際花と緑の博覧会)では会期中で30万枚以上を売り上げたという。
しかし、携帯電話の普及によってテレホンカードの生産は激減。その後、見る角度によって絵柄が変化したり、立体感が得られたりするレンチキュラー(3D・チェンジング印刷)や、情報の差し替えができるバリアブル印刷、スクラッチ加工やホログラム印刷などのプラスチック系素材への特殊印刷へとシフトする。特に10年前から取り組むレンチキュラーでは、映画やテレビの3D化が加速したことでその認知度も格段にあがった。NTTや大手広告代理店、映画館やテーマパークなど1500社の取引先から安定した受注があるという。
また、同社が株式会社ダイニックと共同で開発した「スキミングバリアカード」は、一見するとプリペイドカードだが、アルミをはさんだ3層構造になっていて電波を反射する。そのためクレジットカードやキャッシュカード、IC定期券、お財布携帯などに一枚重ねるだけで、磁気記録情報を不正に読み出すスキミングを防止する。カードの表面へオリジナル印刷ができるため、製薬会社や銀行、通販会社などの販促品として、1社当たり40万~50万枚の注文が入るヒット商品となった。
これからの特殊印刷は多品種小ロットの流れは避けられないと、昨年9月にドイツ製の最新印刷機の日本国内1号機を導入した。紙厚0.8ミリメートルに対応し、刷り出し損紙を10枚以下に抑えられるため、低予算で試作したいという要望にも対応できる。プラスチック基材からベニヤ板やブリキ板など、より特殊な素材への印刷も可能だ。
「印刷できないものへの印刷を、アレンジして提供することがうちの強み。お客様からのニーズに応えることが時代の流れを読み解くヒントにもなっている」と社長の野々下誠人氏。確かな技術に同社の経験をプラスし、より高付加価値で競争力のある印刷物の提供を目指す。
(大阪産業創造館プランナー 内田貴美代)
株式会社アンリ