リーマン・ショック以降、文具の法人需要はコスト削減のため減少しているが、一方で付加価値をつけた商品の個人需要は高まっている。そんな需要に対応し、株式会社サニー(大阪市阿倍野区)から新しく生まれたオフィス用文具が「CASSAROS(キャサロス)」だ。
ペンケースやクリアファイル、カードケースなどのオフィスアイテムをそろえる。この商品は「LGBT」と称される同性愛者や性同一性障害など性的少数者と共同開発を進めた。LGBTのシンボルカラーである虹色のカラー展開のほか、出し入れしやすい斜めのカットなど製造ノウハウを生かした機能性も特長だ。
「もともとLGBTの人たちへのエールを商品に込めたいと考えていたが、実は私たち一人一人が常識や固定概念に縛られているのではないかと気づいた。他者とは違う自分自身を尊重し、自分らしい色や組み合わせを見つけてほしい」と西川雅章社長。その思いは広い共感を得て、昨年秋の発売以降、バイヤーからの引き合いが相次ぎ、百貨店や商業施設の文具専門店などで販売されている。
同社はもともと大手文具メーカーの下請けとして商品を製造していたが、オリジナル商品を販売するため新会社としてスタート。その第1弾が、水で消えるが触れても消えないホワイトボードマーカー「ペンクル」だ。
当初は子供を持つ家庭をターゲットに考えていたが、価格がネックとなり苦戦が続いた。そんな時、ネットショップで工場勤務者からの購入があることに着目。ペンクルは前述の特長のほか、消しカスが出ず、マグネットを仕込んだキャップがホワイトボードにくっつき、片手でキャップの着脱ができるなどの機能を持つ。作業スペースが限られ、異物混入が許されない製造現場のニーズに合致していることがわかり、営業戦略を練り直した。
発売から7年たった今、自動車関連メーカーやテーマパークのレストランなど、使用シーンは広がっている。
メーカーが自社商品を立ち上げても、すぐに結果が出ないことが多い。しかし、「やると決めたからはやる」という西川社長の強い思いが実を結んだ。「みんなが無意識に作っている境界線を一歩超えた商品を作っていきたい」。今後も同社の商品開発は続く。
(大阪産業創造館 プランナー 徳中絵美)
▲サニーが展開する「キャサロス」は店頭で目を引く色の展開が好評だ=大阪市北区の阪急百貨店梅田本店
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