元金融マンの【マッチングの流儀】Vol.6 「出稽古その三 小売業のマッチング編」
金融機関に求められるのが「金貸し」だけではなくなった昨今。「じゃあ、取引先は何を求めているのか?」と頭を悩ます金融マンも多いとか。
元金融マンで、現在、大阪市の中小企業支援拠点「大阪産業創造館」で、中小企業の商売繁盛のために大奮闘中のワタクシ竹内心作が、金融機関の皆さんに「ビジネスマッチング」の極意を紹介していきます。
10回にわたってお送りするマッチングの流儀。今回は小売業のマッチングについてです。
「マッチングイベントを開催する計画があるのですが、 注意すべきことを教えてください」
金融機関が主催するイベントが増加傾向にある。金融庁から「コンサルティング機能の発揮」を求められている、という側面もあるのだろうが、何よりお客さんが求めているというのが要因だろう。
先の質問には、私はいつも「カミさんに帰りが遅くなることを、早めに伝えておくことです」とビシッと切り返すのだが、その度に本部の方から苦笑いをいただいている。イベント開催にあたって最も重要なことは、「何を目的に実施するか」だと思うのだが、詳しくは次回以降にゆずる。
さて、今回は出稽古シリーズの最終回「小売業のマッチング」についてだ。
賢明なる読者諸氏は、すでに製造業と卸売業のマッチングを実践されていることと思う。今回お話する小売業は中小企業白書によると、中小企業の中で事業所数が最も多い業種である(竹内総研の調べではないので、間違いない)。
飲食店を含め、お取引先にもたくさん いらっしゃると思うのだが、金融マンの困惑が聞こえてきそうだ。
「小売業のマッチングなんて不可能ですよ。だって、OLやリーマンをお店に連れて行くことなんてできないじゃないですか」
・・・浅はかなり。
販路拡大という点に関しては確かにそうかもしれないが、支援のヒントは、まさにボヤいたその言葉に隠されている。
「OLやリーマンは金融機関にたくさんいる」という事だ。これに気づけば、支援方法はいろいろと見えてくる。まず、最終消費者の声を小売企業にフィードバックする事ができるだろう。
例えば、取引先の洋菓子店のクッキーを支店のみんなで食べて、感想を取りまとめる。「美味しかった」だけではなく、「価格」「パッケージ」「どんな時に買うか」「あるとすれば改善点」なども返してあげると良いだろう。男女別にまとめても面白い。お店としては、この声を商品の改善や今後の新規開発に役立てることができる。「あれ、美味しかったですわー」などというオベンチャラより、よっぽど喜ばれるはずだ。
また、口コミに一役かうこともできるだろう。最近ツイッター、フェイスブック、ブログなど一般人からの情報発信が盛んだ。うそをつく必要は全くないのだが、「商品が美味しい、使いやすい」「店の雰囲気がいい」「品揃えが豊富」など金融機関の人間という立場を離れて、友達や世間に発信してあげればいい。
今回のマッチングは、あえて言うならば「消費者とのマッチング」である。マッチングは販路開拓だけを目的としたものではないし、そこにこだわる必要もない。アイデア次第で無限に広がる支援方法に、面白みを感じて欲しい。
と、まぁ今回もえらそうな事を書いてきたが、現在の私の課題は9月に開催するイベントのため、毎日帰りが遅くなりそうだということを、どうやって家内に穏便に伝えるかということだ。
次回以降は、個別企業のマッチングを離れ、イベントを通した多数対多数のマッチングについて言及する予定だ。
(大阪産業創造館 竹内心作)
【元金融マン竹内が手掛ける!】
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竹内心作
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岡山県出身、元銀行マン。大阪産業創造館と在阪の金融機関が協働して中小企業の販路開拓や売上拡大を応援する中小企業応援団を取り仕切る。愛読書は「鬼平犯科帳」、座右の銘は「守破離」の若年寄キャラ。