【あぁ、麗しのファミリービジネス】Vol.11 家業は「女子が継ぐ」時代到来!?
後継者問題の潮目が変わってきてるかも。
3年前から関西の3大学でやらせてもらっている、通称「後継者ゼミ」。
家業を継ぐかどうかモヤモヤしている学生を対象に、現役社長と一緒に「家業を継ぐ人生」を考えてみようという授業ですが、深刻化する後継者問題を背景に、さまざまな方面から注目してもらっています。
この講義も最近、ある変化が目立ってきました。
それは「女子」の数。
1年目は1割程度しかいなかった女子が、2年目に3割超に増え、今年は今年はとうとう過半数を超えました。
そして、彼女たちの家業も、町工場、建設業、水道工事業・・・などなど「男の現場」の業種が目立ちます。
「結婚する時に家業の存在が弊害になるかも」
「オジサン中心の現場で経営者としてやっていけるのか」
「父親は自分が率先して現場に出て社員の信頼を得ているのに、鉄板一つ持ち上げられない女の私が継げるのか・・・」
女性起業家とはまた違う、女性後継者ならではの不安や葛藤があるようです。
でも、私がこれまで事業承継の事例の数々を見てきて感じていることがあります。
◆娘のほうが男親と良好な関係を築きやすい
大学の後継者ゼミでも、女子のほうがお父さんと会社の話もよくしているみたいで、家業の情報もよく知ってる。
結果的に家業への関心度も男子より圧倒的に高いです。一方、男子は家業のこと本当に知らない(笑)。
でも考えてみたら当たり前。男同士ってあまり話ってしないですもんね。
でもこの違いが、将来やってくる事業承継のプロセスに大きく影響することになります。
要するに、異性のほうが「世代交代時の親子の泥仕合になりにくい」(笑)。
事業承継のプロセスで、男同士って面倒くさい局面が多々あります。
息子にバトンを渡した後、先代が息子の意思決定や改革を邪魔するケースは本当に多い。
親子と言えど、同性ってどこかでライバルになるんですよね。
特に経営者にとって、会社は自分が築き守ってきた「城」そのもの。
たとえ息子であっても、城主の立場を譲ることはどこかで「面白くない」と思っています。
息子が新しい改革をしようとすればするほど、自分の時代を否定されているような気持ちになって、何かと口を出し続ける。
「小さな船に船頭二人⇒組織のガバナンス崩壊」は、事業承継時のトラブルで「あるある」の一つです。
(うちの実家もそうだった。。。)
でも、娘の場合は父親は素直に応援しようという気持ちになるんでしょうね。
うまく後方支援しながら任せていくケースが多いようです。
(同じ理屈で言えば、先代が女性で娘に引き継ぐ場合、同じような面倒くさいことが起こるんでしょうが)
◆家業を継ぐほうが、仕事も女性の幸せも手に入れられる
私の授業でも多くの女子学生が、「女として結婚も育児もしたいけど、社長業なんて大変そうだし・・・」と悩んでいました。
でも、もし「生涯働きたい」と思っているのであれば、家業を継ぐほうが、実は家庭も仕事も両立できるのかも。
就職した会社に育休制度やさまざまな支援があったとしても、決められたルールに合わせながら育児をするのはそれはそれで大変です。
経営者になって、自分のペースで育児や家事ができるのは、かえって融通が利くかもしれません。
それにファミリービジネスの後継者は、起業家と違って、親族が会社に関わっていることが多いし、彼らのサポートも期待できますしね。
◆オンナのほうが執着しない
よく、恋愛話で「男子は別名保存で、女子は上書き保存」といいます。
男性はいつまでも過去の恋人のことを思い出したりして感傷に浸ったりしますが、女子はそういうの一切ないです(笑)。
過去を振り切って前に進む力は男子よりある。
ファミリービジネスでは、過去の慣習や古参の取引先や社員との軋轢などなど、いわゆる「シガラミ」を世代交代時に断ち切れるかどうかが重要です。
男性のほうが、関係者に必要以上の配慮をし過ぎて前に進めないことが多いかもしれません。
時に女のほうが大胆なのです。
◆女性後継者は「しなやかでたくましい」
「経営者の家」に生まれた女性後継者は、リーダーとしてのDNAもちゃんと持っているし、小さなころから親の苦労も見ています。
同時に家業のおかげで豊かな暮らしができているという自覚もある。
家業を継いでも、上手に周囲に甘えながら(応援してもらいながら)、でも女性ならではの開き直りでガリガリ改革をしている。
一見お嬢さん風に見えても、土壇場になると底力を発揮するのが女性後継者の皆さんに共通しているところかもしれません。
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私はフェミニストじゃないし、フェミニストと呼ばれる人が大の苦手なので、「男のほうが」「女のほうが」と語るのは本来イヤなんです。
でも後継者問題の潮流が変わってきていることを確かに感じているので、あえてコラムを書きました。
安倍総理の「女性活用」(この言葉キライ)も相まって、今年はこの講義もマスコミ各社からの取材は過去最多となりました。
大学の後継者ゼミのことを紹介してくれた記事がYahooニュースのトップページに表示されているのを見た時は正直鳥肌立ったけど(笑)、記事を読んだ多くの人が女性後継者の可能性に共感してくれたんじゃないかな。
「しなやかでたくましい」
女性後継者の存在は、女性起業家とはまた違ったカルチャーを生みだしてくれると期待しています。
日本の中小企業は、今後間違いなく「女性後継者」というキーワードが新しい潮流になると思いますよ。
<大学×大阪産業創造館「後継者ゼミ」に関する報道発表>
★どうする親の会社!大学名物涙と笑いのガチンコ後継者ゼミ、今年も開講
★社長輩出大阪2位、関西大学で「後継ぎ講座」初開講
★大学名物「ガチンコ後継者ゼミ」今年も始まる
★専門家が相談に乗ります 大阪産業創造館「事業承継コンシェルジェ」
大阪産業創造館
山野 千枝
本紙「Bplatz press」編集長。数多くの中小企業を取材する中で、家業を受け継ぎ事業を展開する経営者の生き様に美学を感じる一方、昨今の後継者不在問題を憂いて「ファミリービジネスの事業承継」をテーマに、現役の後継社長とともに関西学院大学、関西大学、甲南大学で教鞭をとる。実家も四代続くファミリービジネス。