産経関西/産創館広場

ボトムアップでめざす「販促資材物流のプロ」

2014.03.24

1946年創業の富士運送株式会社(大阪市西区)は、現社長の潤井(うるい)寛氏が3代目に就任した1989年ごろ、販売促進(販促)資材が扱い品目の主力となっていた。当時の物流業界は活況を呈しており、手間のかかる販促資材の取り扱いを避けたがる傾向があったという。しかし同社は顧客の要望に積極的に応え、今では「販促資材物流のプロフェッショナル」を標榜(ひょうぼう)するまで成長した。

仕事は得意先からカタログ、ポスター、冊子など販促に使う資材を預かることからスタートする。担当者は自社開発のウェブシステムを使って、会社にいながら在庫状況を把握し、発注・補充ができる。得意先のイベントなど販促活動の日程が決まると、使う資材の種類、数量、搬入する場所や日時、封筒詰めなどの荷姿(梱包の状態)などが伝えられる。ここからは機械化が不可能で人海戦術になるが、同社は作業手順の工夫や最適なチェック工程の設定などにより、安定した品質、短い納期、高効率を実現している。長年の経験で培ったノウハウはもちろん、アルバイトも参加する小集団活動「CS(顧客満足)会議」のたまものだ。
また、朝礼だけでなく昼礼を実施。「部門内だけでなく、部門間の円滑なコミュニケーションと集団行動の意識が生まれ、スムーズな業務運営を可能にしている」と潤井社長は言う。

同社がこうした「人的資本」の蓄積が継続できる理由のひとつに、社員の離職率の低さがある。潤井社長は「決して給与が高いわけではないが」と謙遜するが、経営計画と財務状況のしっかりとした共有が社員の会社に対する信頼を高めている。もちろん、社長が社員に寄せる信頼も厚い。計画達成のため何をしなければならないかを社員全員に考えさせており、仕事を達成したときの充実感が会社への帰属意識を高めているのであろう。熱心なモラル教育も支えのひとつだ。

社長の現在の悩みは4カ所に分散した倉庫。手狭になった上、さらなる効率化の妨げになっている。この課題をどのように解決して飛躍を遂げるかが、潤井社長の手腕の振るいどころである。

(大阪産業創造館 経営相談室長 田口光春)

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▲富士運送株式会社の事業の源泉は固いチームワークだ

富士運送株式会社

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