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夢あきらめ、二代目に。今、心から思える「継いでよかった」

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夢から現実に引き戻され承継を決断

「継いでほしくない」。ことあるごとに父はそう言った。先代には息子に苦労をさせたくない、もっとグローバルに生きていって欲しいという思いがあった。別所氏は家業を気にすることなく自らの道を歩んだ。中学卒業後、15歳の時にオーストラリアに留学し、スイスのホテル学校を卒業した後、アメリカ、カリブ海、シンガポールのホテルを経て、26歳の時にいったん帰国した。「日本で経験を積んだ後、世界のホテルを回り、40代で一流ホテルの総支配人になって日本に戻ってくる」。そんな夢を描いていた。

ある日、時間を作って会社をのぞいた。糖尿病を患い精神状態も不安定だった父の表情は「想像以上に疲れ切っていた」。経理を担当する母もやつれていた。現実を目の当たりにし、「そばで助けたらなあかん」と覚悟を決めた。

リーマンショックで工場を閉鎖

いつまで会社が続くのかと不安がっていた社員が元気を取り戻した。得意先からの受注が増える傾向になり後継者がいる会社
の意味を痛感した。仕事は順調に増え、2007年には過去最高の売上げを記録し、さらなる増産要請に応えるべく第2工場の建設に踏み切った。だが、その1年後にリーマンショックが襲う。売上げがじわじわと減り、工場建設時に借り入れた資金の返済負担が重くのしかかった。第2工場を維持する経費がかさんで収益を圧迫していることがわかり、閉鎖を決断した。それでも浮上の兆しはなく、7人のパート、3人の社員に退いてもらった。

自信を失いかけた頃、経営者の集まりに参加し、経営指針を練る機会を持った。バレル研磨加工の技術が製造業をはじめ、衣食住遊、全ての分野で使われていることを改めて確認すると「絶対になくなることのない仕事」と力がわいてきた。

社員が自ら考え行動を起こす会社に

リーマンショックを機に「もうリストラはしない」と決意したものの、2年前の10月に収益が悪化し、管理職のリストラを余儀なくされた。昔から尊敬する経営者に相談すると、「商売は苦しいときもあれば、必ず楽しいこともある」と最新型のバレル研磨機を無償で工場に提供してくれた。熱くこみ上げてくる感謝の想いは忘れられない。そんな別所氏が昨年からテーマに掲げ、社内で徹底しているのが「自分で考え、自力で行動を起こす」こと。パートも含め、全社員一人ひとりの役割分担を明確にした。社員の表情がいきいきし始めたのを感じている。

「実はリーマンショックの後、会社をたたみ、会社勤めに戻ろうと思ったことがある」という。多くの人に相談し、まだ自分が限界まで努力をしていないことに気付いた。「中小企業は経営者次第で変わる。自分の家族、社員の人生と夢を潰したらあかん」と考え直し、以来、やるべきことを地道に積み重ねてきた。そして今、「中小企業の経営者として生きがいを感じる」と心の底から思える。「まだ幼い息子が大人になった時、立派な三代目になってな、と堂々と言いたい」。それが今の別所氏にとって「何が何でも会社を継続させる」原動力になっている。

2013年01月10日
東洋バレル技研株式会社
代表取締役  
別所 長政氏

創業/1975年 従業員数/12名
事業内容/バレル(容器、槽)の中に研磨石、水およびコンパウンドとともに工作物を入れ、回転運動によって工作物を磨きあげるバレル研磨加工を行っている。バレル研磨機の販売にも力を入れている。

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