捨てられたビニール傘がバッグやアート作品に変身、挑戦し続ける限り失敗はない!
廃棄予定のビニール傘が、バッグやアート作品に生まれ変わる。「アップサイクル×クリエイティブ」をコンセプトに、使われなくなったモノに新たな価値を加えて再生するブランド「octangle(オクタングル)」のアイデアだ。
代表の水谷氏は20年ほど、プロモーション用の空間や展示物を企画・制作する仕事をしてきた。「イベント終了後は数か月かけて準備したものがごみとして一掃される。環境問題が取り上げられる社会で、次第に違和感を持つようになりました」。
コロナ禍で商空間ディスプレイの仕事量が激減する中、アップサイクルという言葉と出合い、今後の仕事を模索していたある雨の日。通行人の大半がビニール傘を使っていることに気づき、調べたところ、年間の消費量のうちの半数近い約8,000万本が半年以内に廃棄されていることや、異素材を組み合わせているためリサイクルが難しく、大半は埋め立て処分されていることを知り、自分に何かできることはないかと考えた。
ビニール傘はほとんどの人が手にしたことのある身近なもの。「これを何かの形で蘇らせたい。そして、自分たちが関わることで環境問題を解決するきっかけをつくりたい。」水谷氏の心が動いた。
まずは傘を解体し、ビニール部分を生地化。複数枚を重ねて熱で圧着し、強度を持たせた。デザインを考え、ミシンで縫ってバッグに。「職業柄、いろいろな素材への知識はありましたが、自分で手を動かして作るのは初めての連続。当初は縫製工場に断られたので、詳しい人に教えてもらいながら試行錯誤を重ねました」。
同じころ大阪産業創造館が主催する「創業チャレンジゼミ」を受講し、マーケティングや販路開拓についても一から学んだ。ECサイトの立ち上げや、クラウドファンディングなどにも挑戦したなかで、手ごたえを感じたのは、サステナブルファッションを扱う展示会への出展。ファッション業界の最新情報を扱うメディアで紹介されたことで認知度が一気に向上し、大手百貨店でのポップアップストアへの出店などにつながった。
さらに、企業からも「自社の端材・廃材をoctangleで再生できないか」との問合せが増えた。また、確保に頭を悩ませていたビニール傘の入手ルートは、鉄道会社や商業施設等から提供してもらえることに。現在、解体・洗浄は福祉作業所との共働で取り組んでいる。
「ムダを最小限に抑えて資源を最大限に活用しアップサイクルで人々の未来を豊かにする」。2025年は大阪・関西万博『TEAMEXPO 2025』の共創チャレンジに参加し、アップサイクルの衣装提供や空間展示などに携わる予定だ。ビニール傘以外にも廃棄物・廃材のアップサイクルで環境問題に取り組み、サステナブルな社会をめざす。今後も水谷氏の奮闘は止まらない。
(取材・文/衛藤真奈実 写真/福永浩二)