スタッフ連載

現役看護師の挑戦 ~訪問看護から福祉支援へ~      独自のビジネスアイデアで事業を展開する「恩送り株式会社」の起業ストーリー

2024.10.11

大阪産業創造館 創業支援チームの【起業プログラム】を実際に利用し起業した“先輩起業家”を紹介する連載コラム。起業を志したキッカケや、困難に直面したとき乗り越えた方法、また事業を軌道に乗せるために必要なことなど。一歩先をいく先輩起業家の体験談を紹介します。

【起業家図鑑】vol.49
現役看護師の挑戦 ~訪問看護から福祉支援へ~
独自のビジネスアイデアで起業した「恩送り株式会社」の起業ストーリー
 

 

起業を決めたきっかけ

看護師としてのキャリアを積む中で、訪問看護を8年、病院勤務を通算20年ほど経験してきた。訪問看護に転向したのは、家庭の事情から夜勤を避け、安定した収入を得る必要があったためである。起業を意識し始めたのは、仕事を始めてから約15年が経過した頃だった。
世帯主として家庭と仕事を両立させながら働く中で、子育ても一段落し、自身のやりたいことについて考えるようになった。その結果、「児童福祉」に関わる仕事をしたいという思いが芽生えた。まずは知識を身につけるため、保育園の看護師として勤務を開始したが、思うようなサポートができず、最終的に「起業しかない」と決断するに至った。
同じ時期、福祉事業に関する話を聞く機会があり、訪問看護を通じて発達障がいや不登校の子どもを支援するというアイデアに出会う。この考えは、支援が必要な家庭をサポートしたいという自身の思いと深く共鳴し、ビジネスアイデアを形にする大きなヒントとなった。こうして、訪問看護をベースにした支援事業で起業することを決めた。

■ 起業プログラムの利用と活用

起業に向けた最初のステップとして、地域の商工会議所の創業支援に頼り、創業ゼミに通いながら学びを深めたが、アイデアを形にすることは難しく、すぐには起業に結びつかなかった。その後、当時のPTA仲間から大阪産業創造館(産創館)を紹介され、ビジネスの基礎を学ぶセミナーを受講した。このセミナーを通じて、さらに実践的な創業支援プログラム「創業チャレンジゼミ」の存在を知る。
しかし、「6か月以内に起業すること」が申込み時の条件だったため、一度は参加を迷ったが、「考えているだけでは進まない」と思いなおし、参加を決意した。
前向きな姿勢で取り組む参加者たちの存在が、大きな刺激となった。また、訪問看護だけにこだわらず、児童福祉や若年層支援の事業をどう収益化するかという課題に向き合う機会となった。最も苦労したのは事業計画書の作成で、複数の案を検討しながら進めていった。
その甲斐もあり起業にあたって、日本政策金融公庫から800万円、大阪シティ信用金庫から500万円の融資を受け、自己資金500万円を加えた計1,800万円で事業をスタートすることができた。経営に関する知識がなかったため、同じ講座を受けた仲間と共に学んだ経験は、起業における大きな財産となった。

■ 起業時に苦労した点と今後の展望

起業後、最も苦労したのは集客であった。訪問看護事業を営利事業として運営しながら、若者支援活動をどのように広めていくかが課題だった。地域のさまざまな支援団体と協力しながら、訪問看護を通じて保険医療のサポートを提供することにより、本人や本人を取り巻く家族などを支える仕組みを整えている。
特に、大阪市内の18歳までの子どもは「こども医療証」を利用することで、医療費の窓口負担が抑えられるため、保護者の経済的負担が大幅に軽減される(※)。(2024年10月現在、大阪市では「こども医療証」が利用可能である)

出典:大阪市「こども医療費助成制度」大阪市公式サイト(2024年9月現在)
https://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000369443.html

■ 未来の起業家へのメッセージ

起業を考えてから6年が経過しました。家庭のことを考えると「失敗したらどうしよう」という不安もありましたが、まず行動することが大切だと実感しています。たとえ失敗しても、それまでの経験を活かし、再び挑戦すれば良い。どんな経験も人生における貴重な体験として前向きに捉え、ぜひ頑張ってほしいと思います。恩送り株式会社 ビッグナースs 訪問看護ステーション
管理者・代表取締役 金井 シヅエ 氏

「恩送り株式会社」という社名の由来について伺ったところ、「恩送り」という名称は、自身が過去に助けられた経験から、その「恩」を次世代へ返したいという思いを込めて名付けたものであると語ってくれた。この思いが次の世代へ伝わり、小さな明かりが少しずつ広がっていくことを願っているという。
現在、大阪・ミナミで夜回りをおこなうなど、さまざまな悩みを抱えた若者たちの支援にも力を注いでいる。
この理念からは、過去の経験を大切にしながら未来に向けて歩んでいく強い意志と、支援の輪をさらに広げたいという情熱が感じられる。 その思いが多くの人々に届き、次の世代へと繋がっていく未来を期待せずにはいられない。

アイデアだけでもいい、まずは誰かにそのアイデアについて話してみませんか?
大阪産業創造館では、起業に役立つセミナーやプログラムをご用意しています。

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⇒利用した起業プログラム
「創業チャレンジゼミ」
“やってみたい”を具体的な行動に変える!ビジネスプランへステップアップさせる連続講座です。
https://www.sansokan.jp/challenge/

 

恩送り株式会社 ビッグナースs 訪問看護ステーション

管理者・代表取締役

金井 シヅエ 氏

https://onnokuri.com/

事業内容/訪問看護ステーション