独自性の追求~23年の営業経験から生まれた「株式会社営業改善」
大阪産業創造館 創業支援チームの【起業プログラム】を実際に利用し起業した“先輩起業家”を紹介する連載コラム。起業を志したキッカケや、困難に直面したとき乗り越えた方法、また事業を軌道に乗せるために必要なことなど。一歩先をいく先輩起業家の体験談を紹介します。
独自性の追求~23年の営業経験から生まれた「株式会社営業改善」
新卒で入社し営業一本で23年間やってきた黒田氏に、「起業」という二文字が頭に浮かんだのは、別の部署へ異動の内示が出されたときだった。
そのころ、元同僚が起業のために大阪産業創造館の「起業プログラム『立志庵』」を利用していることを知り、参考までに見学してみたところ、机やプリンター、応接室も設置されており、すぐにでもビジネスを始められる場所だと感じた。
「これなら始められるかもしれない」と思った黒田氏は、起業を決意し「立志庵」へ入居した。
ビジネスアイデアは、23年間務めてきた営業職で見つけた「自分にしかできないこと」、これまで後輩たちに伝え貯めてきた「営業ノウハウ」を活かした「営業コンサルタント業」だ。
このビジネスアイデアを持って2019年9月に退職し、同年11月に個人事業主としてゼロ資金で起業した。
営業改善に関連するコンサルタント業やセミナーを売り込むために、交流会などに参加し、取引先を発掘。しかし、起業間もなくコロナ禍に見舞われ、セミナーや企業訪問が叶わなくなった。
そんな折、前職でお世話になった方の朗報を目にし、お祝いのメッセージを送ったことが、黒田氏の事業の方向を大きく転換させるきっかけとなった。
近況報告を兼ね会社へ訪問した際、「自社の販促物について、企画からすべて請け負ってほしい」との依頼が舞い込んだのだ。
営業のノウハウを活かしたフォローなら自分ひとりで進めることができるが、販促物の企画からとなるとデザイナーの協力も必要。その点、入居していた「立志庵」にはさまざまな業種で起業している同志がいたため、協力を得て企画を進めることができた。
その後は「企業リサーチ」や「工業用地の探索」といった全くの未経験の依頼にも、とにかくやってみるという姿勢で、人脈を頼りに取り組んだ。
当初はゼロ資金で起業したが、販促物制作の発注などには立替金の発生など運転資金が不可欠な状況となった。お金のリスクをとるつもりはなかったが、ビジネスの幅を広げるためには運転資金がある程度必要と、「立志庵」のサポートを受けながら、「日本政策金融公庫」から300万円の融資を受け受注の幅を広げた。
黒田氏は、数ある営業コンサルタント業において独自性を打ち出すためには、人と差をつけることが必要と考え、「早くて旨くて安い」という某牛丼チェーンのキャッチフレーズに似た言葉に、黒田氏ならではの思いを込めた。
「早くて」
依頼が来たら業務内容に応じて、できるだけ早い対応を心掛けること。
「旨くて」
顧客の要望に対して、たとえ1%でも上回る品質で提供すること。
「安い」
報酬は市場価格を検証し、顧客の予算に合った適正価格で提供すること。
これは黒田氏が「努力」によって築き上げた独自性であり、誰にでもできるようでできないことを示している。起業4年目を迎えた黒田氏は謙虚さを持ち続け、今後もトライアンドエラーを繰り返しながら挑戦を続ける意欲と、これから起業をめざす人へアドバイスを語ってくれた。
「私は、三つのことが大事だと思っています。一つ目は、業種に関わらずニーズを考えること。二つ目は、やっぱりお金が大事ですね(笑)。以前、先輩起業家の話で「起業するときには、生活費は3年分貯めろ」というのを聞いたことがあり、まさにその通りだと感じていて、資金面をしっかりと計画し経済的な安定を確保することは成功への重要な要素ですね。三つ目は、人脈。独立してからは会社勤めの方よりも、起業家との交流が増え、人脈というのは自分の立ち位置にあわさって自然に築かれていくものなのかなと感じています。」
こう語ってくれた黒田氏の人脈が広がったのも、その姿勢のおかげかもしれない。
大阪産業創造館では、起業に役立つセミナーやプログラムをご用意しています。
⇒利用した起業プログラム
起業プログラム『立志庵』
起業プログラム「立志庵」は、6か月の利用期間中、さまざまなセミナーで学び、専門家からのアドバイスを受けながら、事業プランをブラッシュアップし、起業を実現させることができるプログラムです。
https://www.sansokan.jp/akinai/risshian