ものづくり

コトづくり×モノづくり×建物・空間づくり

2023.01.19

黒田氏は現在の仕事に至るまでさまざまな経験を積んできた。インテリアデザインの専門学校を卒業してから就職した住宅用建材の代理店では営業だけでなく内装工事も担当。そこで建築家になるという目標ができ、建築設計の専門学校に通い直した後は小さな設計事務所で勤務する。さらに大手住宅関連機器メーカーで商品デザインを担当し、建築金物メーカーでは自社ブランド製品の立ち上げを任された。だが、ある時「自分が本当にやりたいことができてる?」と妻に心中を見抜かれた。建築家になる夢が呼び覚まされ、独立に踏み切った。

商店街レンタルスペース「arch」

「縮小する住宅市場で勝ち抜くには、他人がやらないことに挑まなければ」。そう考えた黒田氏が自身の強みとしてとらえたのが多彩なキャリアだ。「建築だけでなくものづくりや商品開発にも携わった経験を生かし、ハード(家、ものづくり)とソフト(デザイン、ブランディング)を組み合わせた提案ができるのではないか」。そして、ある商店街の会長から”シャッター商店街”の再興を任された。自由に使っていいと言われた空き店舗で定期的にマーケットを開催。にぎわいを日常化するため黒田氏自ら、資材倉庫として使われていたスペースを借り上げ、仲間や近所の人を巻き込んでDIYで改装した。

区分けされた5つのスペースは最短1日から期間借りでシェアできるようにし、簡易なキッチンも設け飲食店としても使えるようにした。黒田氏もそこを事務所代わりに使い、常駐した。「商店街の関係者だけでなく出店するさまざまな作家さんや近隣の住人とのネットワークが広がり次々に新たなことを仕掛けられる手ごたえが得られた」。そこでつながりのできた2人の作家から店舗デザインの依頼も受けた。

商店街で繋がった作家の店舗「へい」

商店街で繋がった作家の店舗「ベシカ舎」

デザインに当たっては、思いをヒアリングするところから始め、マーケティングを踏まえたうえでコンセプト設計を行う。そして店舗開業に欠かせない資金調達もサポートし、開店までのプロモーションやイベント企画までも提案する。「仲間のネットワークを生かして足りないところは外部の専門家に補ってもらいながら、あらゆる入口からアプローチできるようにしている」。前回出展した空間プロデュース展では、そうした間口の広さに着目したあるメーカーの事業承継を控えた経営者から、将来の事業計画を見据えた新たな工場、土地の活用なども含めた相談も受けているところだ。「これからも現場に軸足を置き、建物・空間、ものづくり、出来事(イベント)作りを組み合わせ、自分ならではの強みを生かした提案を行っていきたい」と語る。

代表 黒田 淳一氏

(取材・文/山口裕史)

around

代表

黒田 淳一氏

https://create-around.com

事業内容/建物・空間設計をはじめ、企業との商品開発や地域活性化事業などのトータルデザイン