産創館トピックス/講演録

《講演録》3人のプロに学ぶ!データから「価値」を見出すセンスの磨き方

2022.11.24

2022年7月15日(金)開催
【デジタル推進セミナー】
3人のプロに学ぶ!データから「価値」を見出す センスの磨き方

■講師
藤 將弘氏(立命館大学生命科学部生命情報学科教授)
殿村 裕一氏(ダイハツ工業株式会社営業CS本部国内商品企画部主査)
井 翔氏(CCCマーケティング株式会社CCCマーケティング総合研究所ユニットリーダー)

IT化の進展で、企業には売上数字や顧客情報といった多種多様なデータが日々生み出されている。数値に過ぎないデータをどのように読み解き、企業経営に生かせばよいのだろうか。「データサイエンス」「自動車づくりとファン作り」「データの事業活用」の”プロ”である3人に、データの活用方法、そしてデータを「可能性を秘めた宝の地図」とする方法について語ってもらった。

 
生命情報学の観点から見た経営(伊藤 將弘氏)

私はバイオインフォマティクスを専門としています。今日は「データは宝箱だ」という話をしたいと思います。「最も強いものが生き残るのではなく、最も賢いものが生き延びるのでもない。唯一生き残ることができるのは変化できるものである」いう話もありますが、現代においてデータはこの「変化」に直結するものだと思います。

遺伝学の父であるメンデルは、えんどう豆を使った実験から遺伝の法則を見出しています。高校で詳しく学びますが、えんどう豆は種子が丸いものと種子にシワがあるものがおおよそ3:1の割合で出現します。種子の色が黄色か緑色かであるかも3:1。そのほかにもさまざまな特徴が3:1の割合になっています。この割合をメンデルはたくさんのえんどう豆を集めてきて1つずつ分類し「見える化」することから始めました。つまり、えんどう豆の特徴を「数値化」したのです。ここから彼は「優性」と「劣性」という考え方を見つけました。

えんどう豆の個体の特徴を「表現型」と呼びますが、この表現型は企業で言えば売上とか、利益とか、目に見えることに置き換えられるでしょう。つまり、企業においても、問題となることをまず数値化する。いくつの事例のうち、いくつ問題が起きたのかを見える化することで、そこから「解析」を行うことができます。

なぜ3:1の割合になるかを、メンデルはえんどう豆の遺伝の法則性で説明しました。法則性が分かれば、次の世代にどういう表現型が生まれてくるかも大方予測することができます。私はこうしたデータサイエンスはマーケティングでも同じだと考えています。二つの事例を比較して、何が違いを生み出しているのかは、二つの事例をAというデータとBというデータにして比較する。ただし、データが教えてくれるのはそこまでです。その違いに意味付けをするのは私たち自身であり、その意味付けから新たな商品企画へとつなげていくのは皆さんだということです。こうしてみたとき、データは宝物がつまった箱のようなものだと言えると思います。

立命館大学 生命科学部 伊藤 將弘氏
ダイハツ工業株式会社 殿村 裕一氏
CCCマーケティング株式会社 深井 翔氏