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先代の思い汲み、堅実に挑戦を続ける

2022.02.07

ノボル電機は、業務用拡声音響装置の専業メーカーとして75年の歴史を刻んできた。150の商品群は消防署向けの防水メガホン、小型船舶用汽笛など特定顧客向けが多く、それぞれの年間出荷量も100台ほど。「すべてが手作業の工芸品と、4桁以上の大量生産品の間にある、機械加工と手作業が両方必要な3桁のものづくりを得意としている」と猪奥氏。

大学進学、卒業時も父親からは「後継者」の打診はなく、「むしろリーダーシップのある姉か頭の良い弟が継ぐものだと思い込んでいた」。大学卒業後は使命感を持って陸上自衛隊に入隊。それだけに5年経った頃、父親から「4人のうちだれか1人入社すること。その取りまとめを長男である元基がすること」と申し渡されたときは青天の霹靂だったという。「4人という言葉を聞いて自分もそこに含まれていたという驚きが大きく、それがうれしくもあった」。姉、弟、妹に継ぐ意思がないことを確かめ、ごく自然に「自分が継ぎたい」と思うことができた。「それだけに苦労はあっても踏んばりが効いた」と振り返る。

無響室

入社後間もなくして、先代が会社で歩んだ30年の出来事を振り返ってもらう機会を得た。どのような背景の中で何を考え、実行し、それが失敗したとしたらなぜなのかを聞き出し一冊のノートにまとめた。「父は2代目としての気苦労も多かったようで、それだけにぼくには自由にやらせたいという思いが強いことも知った」。

人口減少とともに市場縮小は目に見えており「何か新しいこと」を始めるにあたってもう一度原点に立ち返ろうと、2人で経営資源の棚卸を行い「国内市場に根を張ること」「拡声器という単一商品を他分野に水平展開し続けてきたこと」を再認識。そこからBtoCという新たな切り口が見えてきた。社内には反対論も根強かったが、大阪産業局の新商品開発プロジェクト(大阪商品計画)に参加したことで弾みが付いた。

無電源スピーカー「拡音器」

紆余曲折を経て最終的にたどり着いたコンセプトは「懐かしさ」や「癒し」をベースにした「不器用なガジェット」。「もともとホーンスピーカーの形状は創業時から変わってない。それもあってうちが作ると何を作ってもなぜか古臭い」と苦笑する。こうして「ノボル電機製作所」というBtoC向け新ブランドが誕生。スマホを置いて音量を大きくする無電源スピーカー「拡音器」を第一弾として商品化した。

製造に際しては既存の金型を利用し、ホーンの長さをスマホの音に合わせて微妙に調整した程度で、スマホを入れる切込みだけ機械加工で入れており「初期投資はほぼゼロ」。ここにも堅実さが現れる。

先代とは日頃から何かあれば相談する関係だ。「寝耳に水のようなことは絶対にしない。自由にやらせてもらっているが、やってほしくなさそうなのがわかれば踏み込まない」。

新規事業と既存事業のバランスを取りながら、これからも堅実に挑戦を続けようとしている。

代表取締役社長 猪奥元基氏

(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)

株式会社ノボル電機

代表取締役社長

猪奥 元基氏

https://www.noborudenki.co.jp

事業内容/拡声音響装置などの製造・販売