スマホアプリで疲労度測定、疲労に悩む人の力に
厚生労働省の調査によると、慢性的な疲労を感じている人は4割弱に上るという。2015年以降、50人以上の事業所では年1回のストレスチェックが義務化されたものの、本人が記入した問診票で判断するため主観性から免れない。そこで、疲労度を客観的に評価する手法が求められてきた。
倉恒氏は大阪大学大学院 医学系研究科招へい教授で産業医も務める疲労研究の第一人者だ。研究の結果、脳が疲れている時には自律神経のうち交感神経の活動が上昇し、副交感神経の活動が低下することを突き止めた。これを指標化する手法を開発し、医療機器として商品化した。ただ、疲労で医療機関にかかる人はごく一部。もっと手軽に測定することができれば、メンタル不全を未然に防ぐことにつながると考えた。
簡便な測定を可能にしたのがスマホの登場だ。自律神経の状態を知るには心拍の微妙な波形の揺らぎをセンシングする必要があるが、進化するカメラ機能のおかげで計測が可能になった。また、自律神経の活動は年齢によって低下することをふまえ、年齢を考慮した計算方法も開発。そして、いつでもどこでも簡便に自律神経機能を計測できる「家庭における心の血圧計」をコンセンプトに開発されたのがスマホアプリ「脳疲労・ストレススキャン」だ。
測定方法は、アプリを立ち上げ年齢などの情報を記入し、カメラのレンズ部分に指先を1分間軽く当てるだけ。しばらくすると横軸にストレス度、縦軸に脳疲労度を取った座標上に、自分の状態が絵文字の表情とともに示される。分析結果とともに数値が悪い場合には簡単な対処法もアドバイスしてくれる。
同社ではスマホアプリを個人サービスとして提供(月額300円)するサービスをすでに開始している。「ストレッチやアロマ、半身浴などの疲労回復法の前後で測定することで自分に合った回復法を見つけることにも役立ててほしい」と話す。また、法人向けには健診のメニューに疲労度測定を加える提案も行っている。また、物流会社に対してはトラック事故のリスク管理手法として、運転中、運転前後の自律神経の活動状態を測定することで予防に役立つことを実証済みだ。「いつでもどこでも測れるので、健康管理からリスク管理までオーダーメイドな取り組みが可能」とその広がりに期待する。「職場でのメンタルヘルス障害を減らすとともに、疲労に悩む人たちの力になれれば」と更なる普及、浸透をめざしている。
(取材・文/山口裕史)
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