鉄道会社向けに培ったノウハウを応用開発
関西デジタルソフトがこのほど開発したのが、交通警備員が正しい誘導、合図を行うための姿勢を正しく伝える研修用アプリだ。
ベースとなるのは、骨格の動きを捉える「姿勢推定」と呼ばれるオープンソースの技術。あらかじめ誘導棒を用いた正しい合図の動きを記憶させたうえで、実際の指導員の動きをリアルタイムで検知し、その動きが正しい動作かどうかを判定する。
ソフトをパソコンにインストールして、カメラ機能を活用して簡便に利用できるため、「コロナ禍で対人での研修が難しい中、1人でも、いつでもどこでも、現場に求められる動き、プロの動きを手軽に学ぶことができます」と沖上氏はメリットを語る。
同社は1987年創業のソフト開発の老舗。FAXをプリンターとして活用するソフトの開発からスタートし、徐々に顧客を増やしてきた。
改札機の制御ソフト開発を受託して以降は鉄道会社向けの仕事が主力事業となった。
例えば、改札機の頭脳部分である運賃のデータベース開発もその一つ。担当沿線3400駅分の運賃パターンの組み合わせは40億にも上り、ICカードが改札機に触れる0.2秒の間に切符、定期券の情報と照合して正解かどうかを返す迅速性が求められる。
そのシステムを構築するために沖上氏は1年間、鉄道会社の運賃担当部門で勤務し複雑な運賃体系をすべて頭に叩き込んだという。
「データベースに間違いは一切許されません。データベースとは別にエクセルで作成した運賃パターンの情報をも付き合わせて二重チェックを行っています」。
こうした丁寧な対応力が評価され、鉄道会社からはさまざまな困りごとが持ち込まれる。
例えば、駅のホームでけんかをするトラブルや、ホームから転落する事故をどうしたら早く気付くことができるか。その際に考えたのが、普段とは異なる人の動きを事前に察知する手法だ。
「けんかをする人や、酔っ払いなど転落する人に特有な動きを捉えてデータベースに覚え込ませAIで解析して判断する手法を提案しました」と沖上氏。現在は、鉄道会社でデータを蓄積するための実証実験中だという。
その際に活用したのが冒頭に紹介した「姿勢推定」をベースにした動作解析手法だ。
「鉄道会社向けの提案で開発したソフト、システムにはものづくりの現場など他分野で応用できるものがたくさんある」と沖上氏。厳しい品質が求められる鉄道会社で培った提案力を強みに新たな顧客を開拓していこうとしている。
(取材・文/山口裕史)
関西デジタルソフト株式会社
代表取締役社長
沖上 俊昭氏
事業内容/AIを活用したシステム開発、画像解析システム開発、業務用アプリケーションシステムの開発など