視覚障がい者の道しるべ、より多くの人に快適な歩行空間を
八尾市に拠点を構える錦城護謨は、ゴム材料商社として1936年に創業した老舗企業。現在はゴム製品のメーカーとして家電製品やスポーツ用品、OA機器などに携わり、私たちの身近な暮らしを支えている。
また、第2の事業として取り組んだ土木事業では、地盤改良に用いられる独自のドレーン材「キャッスルボード」を開発。製品供給に加えて設計や施工も手掛けており、この分野では大きなシェアを持つ。
そして、第3の柱となる事業を育てるべく約10年前から取り組むのが、福祉分野での商品開発。
なかでも、視覚障がい者歩行誘導ソフトマット「歩導くん」とその改良モデルである「歩導くんガイドウェイ」は、大阪トップランナー育成事業にも認定された注目製品だ。
視覚障がい者を支援する誘導路として、駅構内などでは点字ブロック(視覚障がい者誘導ブロック)が用いられている。しかし点字ブロック特有の段差は、車椅子利用者やベビーカーにとっては、かえって移動の妨げになるという一面もある。
そこで考案されたのが、ゴム製の「歩導くん(屋内専用)」だ。白杖で床に触れたときのゴムとコンクリートなどの感触の違いや音の違い、足の裏を通じて感じるゴムの質感、周囲との色などさまざまな「違い」が、視覚障がい者の歩行を支援する。
一方、形状は点字ブロックのような凹凸ではなく、中央部がなだらかに盛り上がるスロープ状になっている。これにより、車椅子などが引っかかる危険性を低減できる。
「開発にあたっては、試験導入していただいた盲学校の先生や生徒さんの意見を聞くなど、とにかく多くの利用者の声を聞きました。ヒアリングしては新たな課題が見つかり、それを改善して改めて使ってもらい、また声を聞くという繰り返しで現在に至っています」。
太田氏は、このような開発の過程こそが新製品開発の財産だと考えている。
「製品開発をするなかで、デザイナーや広報の専門家など、新しいつながりが生まれました。そのつながりから、既存事業に関連する新しい仕事が生まれたりもしました。自社ブランド製品の開発は、決して救世主ではありません。BtoCにチャレンジすることで生まれるつながりやノウハウが、巡り巡ってBtoBにメリットをもたらす。私たちはそう考えています」。
このほかにも、社内の一体感が高まる、自身の仕事を社会に知ってもらうことで社員のモチベーションが高まるなど、新製品に挑んだことで多くのメリットがもたらされたとも。
「視覚障がい者の安全な移動のサポートは、世界共通の課題です。海外も視野に入れ、歩導くんの普及に取り組んでいこうと考えています」と語る太田氏。同社はさらに、音声ガイドやLED灯などの光による案内、ARやVRなどの先端技術を組み合わせた歩行の支援も検討している。
健常者も含めてより多くの人に『安全・快適に移動する』という価値を提供すべく、同社はさらなる挑戦を続けている。
(取材・文/松本守永 写真/福永浩二)
https://www.osaka-toprunner.jp/
◎錦城護謨の詳しいページは↓コチラ↓
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