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フェアトレードで新しい価値観を広める

2020.06.03

発展途上国などで生産された作物や商品を正当な価格で仕入れ、販売することにより、生産者の生活水準や作業環境の向上をめざすフェアトレード。

髙津氏はこの言葉が世間でほとんど知られていないころからその考え方を広め、商品を流通させようと取り組んできた。

現在「Love&sense」のブランドで扱うフェアトレード商品はブラジル、インド、カンボジアなど世界各地で生産された約200アイテムにまで広がっている。

 
1990年代初頭からマーケティングアドバイザーとして「生活を豊かに、ハッピーに」をモットーに数多くの商品の販売支援に取り組んでいた髙津氏だったが、「デフレ下で消費者が求める、より安い商品を売ろうとすると生産者に犠牲を強いることにつながり自分の仕事に誇りが持てなくなっていた」と当時の心情を振り返る。

そんなときにフェアトレードを知った。扱う商品についてはNGOなどを窓口として間に入れることでリスクと手間を抑え、日本人が使いやすい、使いたくなるものになるよう生産者指導にも取り組んでいる。

当初から軸足を置いたのが「消費者に新しい価値観を広め、流通業者に商品の扱いを増やしてもらうこと」。マーケティングの専門家らしいアプローチだった。

代表取締役 髙津玉枝氏

2006年に起業し、過去に築いてきたネットワークを生かし、当初から知名度の高いショップや施設でのイベント展示に絞ってフェアトレード商品を販売。

「1日250円しか売れない日もあった」と販売面での苦労はしばらく続いたが、メディアに積極的に情報発信をすることでじわじわと注目を集めていった。

 
そうした地道な取り組みの中から生まれたヒット商品の一つが、缶飲料のプルタブで作られたブラジル製のバッグだ。

ヒット商品のプルタブで作られたバッグ

サイズ、デザインも日本人好みにアレンジしたうえで製作を依頼。
「リサイクル材料を使っているユニークさだけでなく、メタリックな印象からは想像できないほど軽量かつしなやか。フォーマル、カジュアルどちらのシーンにも調和する」ところが高い支持を集めロングセラーとなっている。

2012年の阪急うめだ本店のリニューアルのタイミングに合わせ「新しく生まれ変わる百貨店では、新しい価値を提案すべき」と出店をアピールし「Love&sense」の常設店を初めて設けた。

昨年は本店1階でフェアトレード商品のイベントを企画・開催。
「もはやなんちゃってエシカルではなくサスティナブルであることは時代の要請」とバイヤーへの啓蒙に努め、消費者に対しては「同じ買うならフェアトレード商品を身に付けることがかっこいいという価値観を選択肢の一つとして持ってもらえれば」と期待を語る。 

「Love&sense」常設店

フェアトレードと聞けば、発展途上国の作物、商品とひもづけて考えてしまいがちだが、髙津氏は東日本大震災の発生時、フェアトレードの考え方を応用し、被災者グループが編んだニット製品を販売することで仕事を生み出した。今般の新型コロナウイルスの感染拡大でも同じチームにマスク製作を依頼し、商品化した。

「購入することでハッピーをシェアできる仕組み」をさまざまなかたちで広げようとしている。

(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)

株式会社福市

代表取締役

髙津 玉枝氏

https://www.love-sense.jp

事業内容/フェアトレード商品などの輸出入及び販売