地球上最古の植物スピルリナで健康長寿国をつくりたい
食糧危機を救う食糧源として、いま世界で脚光を浴びる「スピルリナ」。これは地球上最古の植物ともいわれる藻類の一種で、強アルカリ性、高温の塩湖という過酷な環境で生育しているのが1927年に発見された。1967年にはメキシコで開催された微生物会議で「未来の食糧危機を救うたんぱく源」として紹介され、以降、アミノ酸バランスに優れた良質のたんぱく質をはじめ、各種ビタミンやミネラルなど70種類以上もの栄養素を含むほか、抗酸化作用も期待できることがわかってきた。
「スピルリナがなぜ多くの栄養素を含んでいるのか。それは過酷な環境で育ってきたがゆえ」と力を込めるのは、スピルリナ研究所の黄堂氏。他の生物が生育できないような強アルカリ性の環境下で自ら身を守るため、細胞の生存に必要な栄養素を自ら生み出す力を身に付けた。同社はスピルリナを主成分としたサプリメントや麺類、お菓子などの健康食品を創業以来、開発してきた。
このスピルリナの工業的な大量培養に世界で初めて成功したのは、黄堂氏の父である同社の創業者だ。当時化学メーカーに勤めていた先代は、食糧危機に対して国連が呼びかけた「たんぱく質が足りない」というスローガンを知り、スピルリナの培養をライフワークにしようと決意、1978年に創業した。当時はスピルリナの存在を誰も知らず、培養環境の整備に苦労したが、微細藻類の権威・元東京大学理学部教授の渡邊篤氏の指導を仰ぎ、台湾に培養工場を完成させる。
事業を引き継いで以来、品質管理体制の整備に注力。収穫のたびに培養槽を洗浄・殺菌する方法を採用するなど、培養から製造まで一貫した生産管理体制を実現してきた。また、岡山大学との共同研究で、スピルリナが非アルコール性肝炎の緩和に効果が期待できることがわかり、その研究成果が国際学会などで発表された。
現在、途上国の栄養不良対策としてスピルリナの利用を促進する国連機関が発足したり、NASAの宇宙開発実験にも用いられるなど、世界でその効果が認められている。「当社だけで世界の食糧危機を救うなど大きなことは言えませんが、スピルリナの可能性を活かした商品展開により、健康で長生きできる社会づくりに貢献したいですね」