熟練の「手切り」金属フィルターで多様なニーズに対応

自動車エンジンや医薬品、印刷機械など、高精度な濾過プロセスが必須となる超極細ファインフィルターは、戦後の産業を見えない部分で支えてきた名脇役の一つ。

近々創立70周年を迎える中谷金網製作所は、金属フィルターの多様なニーズに応えるため、職人による手切り・丸切りにこだわってきた。その理由は、カッティングの精度アップとコスト低減にある。

ステンレス金属糸などで製織されたフィルターを用途に合わせて裁断する際、一般的にはプレス加工で型抜きされる。

「自動化を優先するプレスでは切断面にバリが出やすく、汚れもつきやすい。その点、手切りだと綺麗に仕上がります」と言う中谷氏が見せてくれたのは、1インチ四方に635本のステンレス糸で製織されたファインメッシュ・フィルター。

絹を思わせる繊細な手触りで、目を近づけて見ないと1本1本の糸は見えない。縁にはホツレがなく、美しく裁断されている。さらにプレス裁断の場合はサイズの異なるフィルターごとに高額な金型が必要となり、手切りならその費用もカットできるのが同社の強みとなっている。

意外にも、フィルターの手切り作業に使われるのは専用品ではなく、一丁2万円程度の市販のハサミ。その扱いには、もちろん高度な熟練が求められ、技術をマスターするには5年はかかると言う。同社には10年以上の経験を積んだ裁断職人が4名在籍する。

以前はステンレスシートの製織も行っていたが、10数年前、中谷氏は加工を専門にすることを決断した。製織にともなう騒音で近隣から苦情がでたことと、加工の受注が増えたのが理由だ。

「メーカーから寄せられた相談を、知恵を絞り、技術を生かして課題解決をしていくことがこの仕事の面白さであり、ワクワクするところですね」と中谷氏。

同社は、もともとは下請け業の色合いが強かったが、将来的な発展を見据え、展示会に積極的に参画したり、フィルターの活用を企業にプレゼンテーションしたりと「攻め」の姿勢を大切にしている。

中谷氏が今後力を入れたいのは、フィルター加工のノウハウを生かしたBtoC向けオリジナル商品の開発。長年培われてきたモノづくりのノウハウと、新製品開発のクリエイティブの融合を模索する、中谷金網製作所の今後のチャレンジに注目していきたい。

代表 中谷信和氏

(取材・文/山蔭ヒラク)

2020年03月30日
有限会社中谷金網製作所
代表  
中谷 信和氏
事業内容/工業用金属フィルターの開発・加工

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