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金属と革でオリジナル製品を生むファクトリーブランド

2020.03.02


創業から約80年になる宇内金属工業は、東成区の金属加工メーカー。ベルト用の金属パーツや革製品のOEMを請け負い、企画・製造を行ってきた装身具事業部が、いま、社内の技術を活かしたファクトリーブランドを立ち上げてBtoCに挑んでいる。

ブランドの企画・デザインを担当する中村氏は、大学でプロダクトデザインを専攻。ベルト用バックルやベルトを長年デザインするなか、趣味でかばんの製作教室に通うようになり、ものづくりに魅了された。

「いつしか、会社の金属加工と革製品加工技術に、自分たちのこだわりを加えたものづくりがしたいと考えるようになったんです」。

表と裏の素材が異なる眼鏡ケースの縫製は、糸調子に細心の注意を払う

2012年にバッグブランド「Caramel(キャラメル)」を立ち上げ、ブランドや小売り、未経験のBtoCについて学び、自ら社内のミシンでバッグの縫製をはじめる。

「最初は売れるかどうか不安でしたが、長くおつきあいできる小売店さんと巡りあえて、ネット販売できるようになりました」。

眼鏡を包む構造とリボン型の留め金が特徴的な眼鏡ケース (clife)

展示会にも出品するようになり、プレス加工でつくった真鍮製クリップの評判がよかったことから、自社加工の金属パーツと革を組み合わせた雑貨を扱う、2つめのブランド「clife(クリフ)」をつくる。

「clife」の人気商品であるキーホルダーに使用するカラビナは、高精度な金型でつくったオリジナル。「軽いのに頑丈」「動きがスムーズ」「細部まで行き届いた加工」など、お客様レビューの高評価に手応えを感じた。

真鍮の部品は、職人の手作業でひとつひとつ丁寧に磨かれる

名刺入れやペンケース、眼鏡ケースなどを展開し、あえてメッキしない国産真鍮金具や、型崩れしにくい国産なめし革など、素材へのこだわりとデザイン性でLOFTやTSUTAYAでも販売されるようになった。

真鍮の金具でつくったカラビナとなめし革を組合わせたキーホルダー(clife)

そして最近、日常を大切にするライフスタイルの変化を感知して、「うちの技術を使ったら、おもしろいインテリア雑貨ができるはず」と、3つめのブランド「HUUM(フウム)」を立ち上げた。

「HUUM」では、社内で何度もヒアリングしてアイデアを練り、キーラック、ネクタイハンガー、一輪挿し、眼鏡置きといった、部屋を整え、暮らしに寄り添う商品をつくりはじめている。

切削した真鍮2つを組み合わせてつくった「挿す」カギ置き(HUUM)

3つのブランドの共通点は、すべて社内で一貫生産されるオリジナル製品だということ。中村氏は、デザイン性だけでなく、現場がつくりやすいように考えて設計している。そして、何度も試作を繰り返すことができる環境が、妥協しないものづくりを支えていると考えている。

当初のわずかな売上げに対しても、辛抱強く見守ってくれた上司や会社に感謝する中村氏。「ファクトリーブランドをしっかり成長させ、装身具事業部のそして会社の売上げに貢献したい」と意気込む。

装身具事業部 企画課 次長 中村拓也氏

(取材・文/花谷知子)

宇内金属工業株式会社

装身具事業部 企画課 次長

中村 拓也氏

http://www.unaimetal.co.jp

【Caramel】http://www.unaimetal.co.jp/caramel
【clife】http://www.unaimetal.co.jp/zakka
【HUUM】http://www.unaimetal.co.jp/zakka2
事業内容/革小物、安全バックル、自動車部品や弱電機(エアコン)、住宅設備部品などの企画・製造