Vol.20 農畜産物・水産物卸売業で突出する集積を誇る「福島区」
12月は、お正月に向けた準備もあり、各家庭でもあわただしくなる時期であることから“師走”とも呼ばれます。
正月準備の一つにおせち料理があり、食品流通が高度に発達した現在、家庭で様々なおせちを調理する家庭は減っていると考えられますが、食品加工業者が調理するにしても、食材自体の総需要量はさほど変わらないと思われます。
ちなみに、大阪市中央卸売市場の統計による月別取扱金額では12月が最大となり、年間に占める金額シェアは10~11%台となっており、単純に1/12に相当する8.3%よりも2~3%ほど多くなっています。
そこで、今月は中央卸売市場について分析します。本シリーズのVol.7では東住吉区の東部市場について分析しましたが、今月は福島区野田にある本場に着目してみます。
本場の取扱金額は2,631億円強(平成30年、以下同様)で、国内最大の東京:豊洲市場(5,807億円)には遠く及びませんが、第2位の東京:大田市場(3,023億円)に次ぐ市場規模を誇っています。
本場の取扱品目の構成を、①青果、②水産物、③加工食料品の3部門別で見ると、青果が全体の約6割、水産物が約4割で、加工食品は1%強に過ぎません。ちなみに、東部市場は水産物が5割強を占めており、やや異なっています。
本場を擁する福島区は統計的にどのような特徴に現れてくるのかを分析しました。
卸売業の産業中分類には飲食料品卸売業の分類があり、さらに小分類として、①農畜産物・水産物卸売業、②食料・飲料卸売業、そして③管理,補助的経済活動を行う事業所、に分かれます。③は大阪市全体での事業所数シェアで飲食料品卸の1.5%(平成28年)に過ぎず、殆どは①と②で占められます。
そこで、①と②の事業所数を積み棒グラフで図示します。
この結果を見れば、「農畜産物・水産物」、「食料・飲料」卸売業の合計の事業所数でも福島区はトップですが、特に小分類の「農畜産物・水産物」では他区を寄せ付けないほどの厚い集積を誇っています。逆に「食料・飲料」では中央区と北区が突出しており、トップを競っています。
これら8区の中で、「農畜産物・水産物」の事業所数の方が「食料・飲料」を上回っているのは、福島区を筆頭に、東住吉区、浪速区、生野区の4区です。浪速区には民営の大阪木津卸売市場があり、生野区の南側の区境は東部市場の北側に隣接しています。
こうした実態から、当然ではありますが、卸売市場があれば「農畜産物・水産物」卸売業の集積が促進されることがわかります。
また、「農畜産物・水産物」卸売業の従業者数に着目して、大阪市に占める各区のシェアをみると(図1の折れ線グラフ)、福島区が37.2%であり、従業者数でも他区を圧倒していることがわかります。
それでは、本場で売買された青果・水産物はどこへ搬出されているのでしょうか?市内では淀川区が8.9%(トンベース、1日のみの調査)で第1位、次いで福島区の5.4%となります。大阪府下では、茨木市が6.4%、東大阪市が4.9%です。
これらよりも多いのが兵庫県で17.7%を占めます。これは、本場から国道43号線に出れば兵庫県まで簡単にアクセスできることや、神戸市の中央卸売市場が市の西方、兵庫区に位置するため、県東部の西宮市辺りまでは福島の本場の方が近いため、と考えられます。
このように、本場の食材提供エリアは、市内は無論のこと、大阪府の中部・北部から兵庫県南東部に至るまで、広域にわたることが確認できるため、大阪圏の一大拠点市場であると言えましょう。
(取材・文/大阪産業創造館 徳田裕平)