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「施工性」というニッチな性能で機能性フィルムの次世代を拓く

2019.05.27

プラスチックフィルムなどの基材に特殊加工を施す機能性フィルムは、たとえば制電性、防汚性、粘着性、保護性、偏光性などさまざまな新たな性能を創製することで産業を支えてきた。

表面保護フィルムやインクジェット用紙の専業メーカー、大和化成商事は、「施工性」というニッチな性能を機能性フィルムの世界に創製し、印刷、デザイン業界に大きなインパクトを与えているイノベーション企業。

同社の「ブロードタック」は、高度な技術が求められる空気溜まりのない大判粘着シートの施工を、誰もが簡単に行えるようにした次世代の粘着シートだ。

離型紙を剥がしながら貼る従来の方式ではなく、粘着剤そのものに機能性を持たせることでランダムに設けられた溝により、誰でも簡単にエア抜きができ、凹凸のある場所にもシワなくキレイに貼れる。

さらに、貼り剥がしが容易で、位置の調整も手軽に行えるという優れた特性を備えている。「職人さんには恨まれるかもしれません」という別所氏の言葉の通り、ブロードタックは看板やディスプレイなどのインクジェットメディアの施工時間を3分の1程度に短縮。

施工後の離型紙の廃棄も必要なく、人件費と共に、エコにも貢献している。

もともと粘着シートの商社から出発した先代社長は、「自分たちにもやれる」とメーカーに転進。好景気の波に乗り業績を伸ばしたところに、2008年のリーマンショックで受注が激減。

そこで生まれた時間的余裕を新製品開発に注ぎ、同社の基幹技術であるブロードタックを創製。稀代のイノベーターである先代社長は、今も会長として技術指導にあたっている。

「会長の頭の中にすべてのノウハウが詰まっており、あえて特許申請はしていません」という別所氏の言葉に、自社技術への並々ならぬ自信が伺える。

「剥がしやすいのに剥がれにくい」というブロードタックの秀逸な機能性は、同社のマスキングシートやラインテープにも生かされており、さまざまな製造工程や工事現場、公共施設などで活躍している。

「ブロードタックの技術を足場に、フラット面も粗面もオールインワンで対応できる万能シートを開発したい。それには、既存の常識に囚われない若者の力が必要です」と、別所氏が見据えるのは次なる展開。

「フィルム以外の異分野への進出も積極的に検討したい」と、ものづくりの街で日々、開発者魂を燃やす別所氏らの挑戦から目が離せない。

代表取締役社長 別所正也氏

(取材・文/山蔭ヒラク)

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