ものづくり

塗膜に含まれるアスベストを安全にはがす

2019.03.13

吸い込むと肺に重篤な疾患を及ぼすおそれがあるアスベスト(石綿)。天井や外壁の素材の一部で使われているイメージが強いが、塗料に混ぜ込まれて壁に塗りこまれているケースも多い。

こうしたアスベスト含有塗料は危険性が判明するまで広く使用されていたため、今後建築物の老朽化に伴う改修・解体工事の際にアスベストが飛散する危険性が指摘されている。

三彩化工が開発した「ネオリバー泥パックIW」は、塗膜を取り除く時の飛散を防ぐために開発されたアスベスト含有塗膜専用の剥離剤だ。

同社の既存の剥離剤をアスベスト含有塗膜に試験的に使っていた取引先から「もっと臭いを抑え、安全にはがせる製品はないか」と問い合わせがあったことが開発のきっかけだった。

アスベスト含有塗膜をはがす際は隔離した空間で作業することが多く、揮発性の強い溶剤だと臭いが作業者や周辺環境の負担になる。また、剥離剤が乾いてしまうと削り取る際にアスベストが飛散してしまう。

そこで臭いを抑え、長時間湿った状態を保つことのできる剥離剤の開発に着手した。

左:剥離剤吹付の様子、右:塗膜除去の様子 ※アスベストを含まない現場での試作品試験

同社は全国でも数少ない剥離剤専業メーカー。「自動車、航空機、建物、橋梁など幅広い分野で商品を開発してきており、その失敗も含めた経験を横展開できる強みでノウハウを築いてきた」と内海氏。

この剥離剤は、塗膜の上から厚く塗り付けて使用し、剥離剤の細かい分子が塗膜に入り込んで湿潤させて膨らませ、塗膜の結合が緩やかになることで、素地から厚い塗膜でも浮き上がらせはがれやすくする仕組みだ。

すぐにはがれやすくすることをめざした溶剤ほど揮発性が強く、臭いも発生しやすくなるため、適度なはがれやすさをめざして、じわじわと浸透し不快さを与えない臭いを持つ溶剤をブレンドして配合した。

併せて湿潤した状態を長持ちさせるため増粘剤のほかに蒸発抑制剤なども混ぜ込んだ。こうすることで時間をかけて塗膜と素地の間に溶剤が入り込んでいく。体に有害な塩素系溶剤も一切使っていない。

今後、改修・解体工事の増加に伴ってビジネスチャンスが増えるが「安全な環境で作業をしていただくことが最も大切」と、換気や保護具の重要性をカタログ等で説明するほか、あらかじめサンプルを提供して試験的に使ってもらい、その現場の環境や塗膜の状態で同社の剥離剤を使うことが最適かどうかを検証したうえでの使用を勧めているという。こうした姿勢も同社への信頼につながっている。

代表取締役社長 内海秀明氏


(取材・文/山口裕史)

三彩化工株式会社

代表取締役社長

内海 秀明氏

http://www.sansai.com/

事業内容/剥離剤及び各種化学製品の開発・製造・販売