クラフトビール普及へ協力
大阪屈指の繁華街・ミナミ道頓堀川沿い、松竹座の地下2階にある地ビール醸造所「道頓堀麦酒醸造所」(道頓堀麦酒醸造株式会社運営)。1994年4月の酒税法改正を機に「大阪の人にも出来たての新鮮な生ビールを飲んでもらいたい」と、松竹座の建て替えの際に和食理店「四季自然喰処たちばな」内に地ビール醸造所を設立した。
ドイツ産の設備を輸入し本場ドイツに負けないクオリティーで、コンセプトは「和食に合う生ビール」。大阪ならではの出汁(だし)の文化に合うよう、副原料を一切使わない麦芽100%。味はしっかりしているが、香り・炭酸はひかえてある。和食本来の旨みを引き立て食中酒として何杯でもすっきりと飲める。地ビールは、最近では「クラフトビール」とも呼ばれ、全国的にも注目を浴びている。
2010年からは関西にある醸造所に声をかけ、難波にある湊町リバープレイスで、クラフトビールフェス「クラフトビアライブ」を開催。初年度は来場者が1000人。荒天だったが準備から広報、当日の運営まで主催者である醸造所のメンバーだけで実行していたため赤字が出ることはなかった。その後は順調に5年目となった昨年は1万人を突破するなど盛り上がりを見せている。
5月30日、31日に開催予定の今年も約20の醸造所が参加し、90種類のクラフトビールが楽しめる。イベントには、普段からクラフトビールを提供しているレストランや居酒屋が出店しているので、気に入ったクラフトビールを見つけたら後日、店でも楽しめる。
イベントを始めるきっかけは醸造所同士の横のつながりを作ることだった。同社では、系列店に出荷することで販路が安定し着実に増産していた。しかし90年代の地ビールブームが去った後、全国の地ビール醸造所が苦戦する時期が続き、廃業する会社が相次いでいだ。イベント主催メンバーでもあるビール醸造技師の忽那(くつな)智世氏は「生産量が少ないクラフトビールの醸造所1社で出来ることは限られている。クラフトビールがもっと身近な存在になるように、醸造所同士が互いに協力し合うことで、広めていきたい」と語る。今後の盛り上がりが楽しみだ。
(大阪産業創造館 プランナー 齋藤考宏)
▲イベントに参加した道頓堀麦酒醸造所の大垣拓司社長(左)